目が覚めると病院のベッドの上だった。

津波の恐怖によって一時的に失っていた感情が蘇る…

恐怖、悲しみ、などの様々な負の感情に襲われた。

しかし不思議と家族を失ったことに関して感情は湧かなかった。

何故だろうか…今となっても分からない。

そんな感情の渦に巻き込まれている中で、一人の女性と出会った。

いや、正確には女性ではなく、女性の皮を被ったなにかだった。

夢の中では私を養子として養ってくれる女性として医師に紹介されたが、私はあれを悪魔では無いかと思っている。

その理由は容姿によるものであった。

よく物語に出てくるようなおどろおどろしい姿では無かったものの、その容姿や雰囲気は人に近しく見えるだけの何かであった。

私は養子として家に連れ込まれ、そこでワインを飲まされた。

未成年であるということは夢なので割愛させて欲しい。

その後その場でワインを交わしながら、私は様々な事を話した。

その内容とは、夢の中の私の話ではなく、現実の私の話であった。

その人は現実の人とも、夢の中の人とも違った。

私の話を誠心誠意聞いてくれ、様々なことを肯定してくれたのだ。

友人と上手くいっていない話、自分の正体がなんなのか分からずに辛いという話、
周りが何故あれ程までに頑張れるのか分からず、自分が頑張れないことによって劣等感を感じているという話、
他にも話したが、書ききれぬ程に話していた。

思っていることを全て吐き出した。

そんな具合で何時間か話した後、このような事を伝えられた。

「この世界は夢だから、もう少しで起きないといけない。だけど、貴方のためにここで待っています」
と…

私はその夢から覚めたくなかった。

必死で抵抗した。
なんとか起きないようにできないか…
と試行錯誤していた。

しかしその抵抗も虚しく、この私達が住んでいる現実の世界へと連れ戻されることとなった。