それから俺はフラフラとした足取りで教室に戻った。



さっきの光景が頭から離れない。



夕凪、笑ってた。俺の前ではあんな顔見せたことないくせに。


こんがらがって、うまく頭が回らない。俺はどうすればいいんだ?


「はぁーー」


ため息をついて机に突っ伏す。


すると頭上から、少し呆れたような声が降ってきた。


「大変そうだな、生きてる?」


「・・・・・うるさい、絢斗。見て察せ」


「はいはい。詰んでんのね」


絢斗は少し意地悪くニヤリと笑った。


くっそ。人が真剣になっている時に。笑うなよ。


絢斗は適当に椅子を持ってきて俺の目の前に座った。


「まーね。夕凪ちゃんかわいいからね。でもさ、今回のは完璧おまえが悪いと思うよ。俺とかおまえと長い付き合いだからツンデレなのわかるけど、夕凪ちゃんは違うでしょ。ちゃんと言わないと伝わらない」


「・・・・夕凪ちゃん言うなムカつく」


「はいはい。相変わらずだね伊月」


夕凪ちゃん大好きなんだね、と続けた。


「仕方ないんだ。あいつとしゃべるだけでもめっちゃ緊張してすげーキョドるし、カッコ悪いとこ見せて嫌われたくない」


「でも、その結果がこれでしょ」


うん。そうだ。そうなんだ。今までの俺の行動で他のヤツに夕凪を捕られかけている。


いや、もう夕凪は俺のことなんか好きじゃなくて、あいつ(啓斗)が好きなんじゃ・・・・。


「諦めるのはまだはやい」


絢斗は俺の考えを読んだように言った。



「まだ間に合う、とは言えない。でも、もう無理かもわからない。今まで逃げてきたんだ。当たって砕けてみろよ」



「砕けたくはないな」


「おう、まあね。でもそれはなんとも言えないね」



・・・よし、今日の放課後夕凪と話そう。例えどんな答えが返ってきても。自分の気持ちを伝えよう。


なんだかさっきよりはいくらか気持ちが軽くなっていた。