「こんにちは~。」
予約してないから、また霊的な事か?と思い、入り口を見る。
そこには、野に咲く花のような可憐な少女が、立っていた。
「いらっしゃいませ。」
「ご無沙汰してます、先生!」
「来店された事ありますか?」
「忘れたんですか?私ですよ、レイトさん❤」
クスッと笑う。
「えっ、えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
岡崎瞳だ。前回の色情霊の時い心霊施術をした女の子だ。
「瞳ちゃん?」
「先生、忘れちゃうなんて、酷いですよ~。」
赤城麗子が憑依していたとはいえ、全くの別人だ。
まるでキャバ嬢がアイドルに変貌したのでは?と思うくらい違った。
「ど、どうしたの!? その格好??
「何、ビックリしてるんですか? これが本当の私なんですよ~。赤城麗子がいなくなったから、本当の自分に
戻れたんです。ちなみに大学生です。」
その日から岡崎瞳は、常連さんになった。
まだ若いし、そんなに施術しなくても、大丈夫なんだが、お客様が望んでいるのに断る事もない。
なにか、別な目的もあるような気もするけど。
~岡崎瞳が通うようになって、数日~
「先生、今日も気持ち良かったです❤」
「それは何より。」
「先生、今日の予約は?」
「いつもながら、無いよ。」
「そう落ち込まないで、私がきますから。」
ハハハ
突然。店の扉が開く
「予約してないんですけど、大丈夫でしょうか?」
「少々お待ちください。」
「先生、またきますね。」
「うん瞳ちゃん、またね。」
レイトさんに挨拶をして店を出ようとした時に、客とすれ違った時、ゾクッとした。
私は、赤城麗子に憑依されてから、霊媒体質になったらしい。霊の存在もわかるし、視えるようになった。
(レイトさん、大丈夫かな?)後ろ髪を惹かれる思いで、店を後にした。
~店内~
「お名前と、症状をお聞かせください。」
「手代木 彩 と言います。 毎日しんどくて、肩も重くて 冷えもあります。」
「お辛いですね。 がんばって、施術しますね。」
突然来店された事といい、症状からいうと霊障かな~?
決めつけはよくないから、じっくり視てみよう。
かなり凝っているな、身体も冷えている。
揉んでも揉んでも、血行が良くなっている気がしない。まるで手ごたえが無い。
(ヒーリングしてみるか。)
ヒーリングとは、気功のようなもので、まあ癒しのパワーだ。
「ゆ~っくり深呼吸してくださいね。」
深呼吸する事で、エネルギーを身体の隅々まで巡らせる。
すると、薄いモヤが浮き出てきた。
そして、”ヒーリング ウエーブ ケア”
掌全体で波のように揉みながら、エネルギーを流し込む。
「先生、身体が暖かくなってきました。」
「血行が良くなってきてますね。」
うっすらと、霊穴が視えた。こんな事は初めてだが、とにかく輝圧だ。
薄いモヤが消えた。
だが、これ以上は、何も変わらないし、何もわからない。
(これは通ってもらうしかないな。)
霊の事言っても、変に思われるだけだし。何とか通ってもらえないかな?
「今日は終わりになります。しばらく通ってもらえますか?」
「凄い軽くなりました。ありがとうございました。」
「次回の予約を取っていきますか?」
「もう大丈夫だと思います。また辛くなったら、来ますね。」
取り繕う暇もなく、手代木様は出ていかれた。
(どうしよう?)
身体が楽になったのなら、整体師としての仕事は終わりだ。
しかし、間違いなく霊障だ。このままでは、また不調になるし もっと酷い事になるかもしれない。
「先生~。」
岡崎瞳が、入ってくる。
「瞳ちゃん。」
「先生、さっきのお客さん、だいじょうぶでした?」
「えっ?」
「あれ、霊障ですよね?」
「瞳ちゃん、わかるの?」
「赤城麗子の件から、視たり感じたりするようになったんです。」
私は、先生にあれからの事を話した。
「そうか。で、何がわかったの?」
「完璧にじゃないんですけど。彼女の後ろをつけるように、人型のモヤが入っていったの?。」
「まるで、ストーカーみたいに。」
「ストーカーか~、とりあえず外したけど。手代木様が また来店されない限りどうしようもないよ。」
先生、思い悩んでるな~。一人で考えるのはよくないよね!
「すいません。」
中年の女性が、突然入ってくる。予約制の店なのに、突然来る人が多いな~
「あっ、お客さんいたんですね?また来ます。」
「お客様、大丈夫です。あっ、お待ちください。」
中年の女性は出ていってしまった。急いで入り口に向かったが、もういない。
(まさか霊か?)
瞳に聞こうとしたが、何か考えていてきずいてないようだ。
(ま、いいか。)
「先生!」
瞳が、突然叫ぶので、ビックリしていると
「先生、ここで私を雇ってください!!」
先生を助けるために、私は先生のそばにいたい。それには、ここで働くのが一番だ。
「え?瞳ちゃん、大学生でしょ?」
「バイトでもいいです。」
「瞳ちゃん、わかるだろ?人を雇えるほど、繁盛してないんだよ。」
「じゃあ、弟子にしてください! なんなら受講料も払います!」
瞳ちゃんは、どうして働きたがるんだ?受講料払うって事は、お金に困ってるわけじゃないしな~
僕も瞳ちゃんといると楽しいし、霊感もついたみたいだから、いいかな。
「好きな時に来ていいよ、瞳ちゃん。」
「本当ですか?」
「もちろん!でも、受講料はいらないよ。」
「でも~。」
「そのかわり、お手伝いしてくれれば、それでいいよ。」
「はい!よろしくお願いしま~す!」
凄い笑顔だ、この笑顔が毎日見れるなら、僕もうれしい!
~数日後~
私も、ここの業務には慣れてきた。まあ施術はさせてもらえないけどね。
お客様も増えてきている、男性のお客様ばかりなんだけどね~
看板娘の役割を果たしてるのかな?私を指名されるとこまるけどね。
一人のお客様が、入ってくる。
「いらっしゃいまで❤」
「あの~、先生はいらっしゃいますか?」
「先生ですか?少々お待ちください。」
「せんせ~い!お客様、ご来店で~す!」
「はい、あっ手代木様、どうされました。?」
「あの~、しばらく調子良かったんですけど。また調子悪くて、それに黒い影が追ってくるの。」
「影?」
「はい、変だって思わないでくださいね。 幽霊みたい、家の中や職場にまで現れるんです。」
(本人に気が付かれるまでに、なったか。 とりあえず、今 憑いてるぶんだけでもはずすか。)
それだけでも、今の症状は取れるだろう。
「では施術しますので、うつ伏せになってください。」
「はい。」
一通りの施術は終える。身体の不調はとれただろう。
問題は、これからだ。
「では先生ありがとうございました。」
「手代木様、お待ちください。 これでは、また同じくなります。」
「じゃあ、どうすればいいんですか? 私、もうこんなのは嫌なんです。」
「では、これまでの事を教えてください。」
「これまでの事?」
「はい、これは霊障です。 ご自分でもわかってらっしゃるでしょう?」
「信じてくれるの?」
「信じます。話してください、それが解決への糸口をみつけだします。」
手代木様は、少し目線を下ろすと語りはじめた。
「私、母親と絶縁しているんです。 母は若い時、遊んでばかりいたんです。
ゆきずりの男とセックスをして、私ができた。 父に妊娠の事を話すと
父は逃げた。そして、車に引かれてなくなったんです。
まだ若かった母親は、両親とも絶縁し一人で私を育てました。でも母の
口癖は(お前がいなければ。)です。」
少し、口ごもる。
「私、中学を出て働きました。母に認めてもらいたくて。 給料も全部 母に
渡したんです。母も喜んでくれると思った。 母は私に費やした時間を
取り戻すように、遊びまくりました。 私は母の遊ぶ金のために働いた。
ある時、私はレイプされた。そして、妊娠した。 産もうと思ったけど
母は私に子供を下ろすように言ったんです。 働き手がいなくなるから
私は、亡くなったお婆ちゃんの姓をなのり、シェルターで世話になりながら、出産子育てをしました。
死にもの狂いで、働きました。
それからです、黒い影が付きまとうようになったのは。」
手代木が話し終えると、ハッキリと黒い影が浮きでる。
(見えた、霊穴だ!)
「手代木様、失礼します。」
手代木の霊穴に、気を集中して輝圧をする。
霊体が離れる、すかさず心霊施術をしようとしたら、消えた。
「え?」
「先生、どうしたんですか?」
「確実に、霊体は離しました。 霊体をあげようとしたら、消えたんです。」
「消えた?」
「はい、三体いました。女性の霊体、これは生霊です。 そこに悪霊がいたんですが一体の
悪霊から守るように、もう一体の悪霊が女性の生霊を連れ去ったんです。」
「なんでそんなに?」
「瞳ちゃん、わかる?」
僕は、岡崎瞳に聞いてみた。こういった事は、瞳の方が得意だ。
「私の感じたままで、いいですか?」
「それでいいよ。 瞳ちゃん、お願い。」
私の心霊整体 初仕事だ!レイトさんにも頼られてるし、頑張るぞ!!
「女性は50歳代で、派手な身なりをしています。 薔薇の香りがキツイですね。
男性は、若いけど昔風の人ですね。 この方は、真面目だけど見かけがチャラい。
もう一体は、人ではないですね。 おどろおどろしく、邪悪な感じがします。」
「瞳ちゃん、ありがとう!」
「手代木様、心当たりありますか?」
「多分、女の霊は母です。 遊ぶようになってから、派手になり薔薇の香水がキツクて
やめるように言っても聞いてくれませんでした。 男性はわかりません。」
「これまでの話しで視えてきたんですが。」
「聞く覚悟ありますか?」
「大丈夫です。話してください。」
手代木の覚悟は固いようだ、僕も覚悟をして話す。
「女性はお母さんで、間違いないと思います。 男性はお父さんですね。」
「父ですか?」
「はい、お父さんは悪霊に死に追いやられてますね。 お父さんの次の
ターゲットが、お母さん。 お父さんは お母さんを守ろうとしてますが
悪霊化しているので、悲しいかな悪霊憑依になってしまってるんです。」
これは、厄介だな。
「どうすればいいんですか?」
「完全に離れてるので、手代木様自身はしばらく大丈夫なはずです。
ただ、お母さんがより酷くなります。」
「母は自業自得です。」
「本当に、そう思いますか? お母さんは、もっと苦しむ事になります。
すると、また生霊が手代木様、あなたに来るかもしれませんよ。」
手代木の表情が悲しみに変わって、一滴の涙を流す。
「私、母が私をどんな思いをして、私を育ててくれたか覚えてます。
お母さんに認めて欲しかった、子供を抱いて欲しいと思ってます。」
「彩さんの思いは、お母さんに届きますよ。 ただ、お母さんに心霊施術を
しないとなりません。」
「お母さんが、どこにいるのかわからないんです。」
「大丈夫です。 彩さんがここにきたのは必然的なんです。必ずお母さんに
会えます。それは、そう遠くないです。」
「また来てください。今度はお子さんと一緒に。」
「はい。」
手代木様は、わずかな希望を持って帰られた。
「先生。」
「ん?どうしたの瞳ちゃん。」
「私、お母さんがここに来店されると思うんです。」
「そうだね。 でも助かったよ、瞳ちゃんの霊視がないと、あそこまでは
わからなかったよ。」
私には、霊視ができたのかどうか、わからない。でもレイトさんの力になれた
事がうれしかった。
~その夜~
「悪霊か~、悪霊なんか僕に何とかできるのかな~? お父さんの霊ならなんとか
なると思うんだけど。その後にいる得体の知れない奴がな~。何者かもわからない
し、どうしたものかな~。
♪ピロリン♪
岡崎瞳から、メールが来た。
✉”先生、今日はご苦労さまでした。悪霊なんて、私ビックリしちゃいました。でも
先生なら、大丈夫ですよね?がんばってくださいね❤応援してます❤ 瞳”
「瞳ちゃんから、そう言われたら、がんばらなきゃな!」
こんな時こそ、おじいちゃんの日記だ!
何々、生霊は生霊を飛ばしてる相手を心霊施術すればいいのか、いつもと一緒か
それで、悪霊払いはーと
「何だよこれ、肝心な所が破けてんじゃん、おじいちゃーん!」
いろんな本を読んでみたし、ネットでも調べた。霊能者に頼むしかないのか?
それじゃー、なんのために今までやってきたのか、手代木様をこのまま見捨てる
わけにもいかないしな~。僕は霊能者ない、整体師だ。
そうだ、僕は心霊整体師だ、僕のやり方で手代木様を救うんだ。瞳ちゃんだって
救えたんだ、大丈夫だやれる!よし!やってやる!!
「でも、盛り塩はしよう!」
~数日後~
「おはようございま~す❤」
「あれ?瞳ちゃん、どうしたの?」
「今日、学校 休校日なんです。それに、今日あたり手代木様来そうだから、手代木様には
慰めが必要です。先生、不器用だから。」
休校日なんていうのは嘘だ。朝から胸騒ぎがするのだ、先生には私の力が必要になると思う。
レイトさんの助けになるなら、私、なんだってするつもり。
今日は、レイトさんの傍にいたい。
「ありがとう!瞳ちゃん。」
「先生、これプレゼントです。」
瞳から、小さい箱を受け取り、中身を取り出す。
「水晶?」
「水晶には魔除けの効果もあるっていうし、ペンデュラムって言って魔法の振子なんだそうですよ。
何か先生にあげたくなっちゃって。」
「ありがとう!大事にするよ。」
ここに来る途中古めかしいお店でみつけた。何か、凄い必要な感じになって買った。
レイトさんために役に立つ、そんな気がしたから。
「こんにちは。」
手代木様、来店されたな。
「いらっしゃいませ~。」
「ん?」
手代木様ではなかった。 年配の女性だ。(うっ?)これは霊障だ。
間違いない。
「先生~」
瞳も、感じたらしい。不安げに、こちらを見る。
顔に出さないようにしないとな。
「今日は、どうされました?」
「予約してないんですけど、身体が酷く冷たくて重いんです。 これって血行わるいんですよね?
病院に行くよりはって思いまして。 大丈夫ですか?」
「柏木 文です。」
「では、柏木様、うつ伏せでお願いします。」
柏木か、手代木 彩 が、頭をよぎった。 今日、手代木様がいらしたら、もうどうにもできないぞ。
黒い闇に包まれて、ほとんど柏木の身体が見えない。これは大変だ。
とりあえず施術しながら、考えよう。
「かなりお疲れですね~、血行も悪いですよ。」
「そうですよね? でも、気持ちいいです。」
まったく、血行が良くならない。 身体も固いままだ。
手代木様の倍は、凄い。いったいどんな霊なんだ、やっぱり事情聞かないと視えないな。
「何か悩み事とか、お疲れの原因って、ありますか?」
「悩み事ですか?」
「はい、悩み事とかあると、それがストレスとなって、凝りや不調の原因になる事があるんです。」
「実は、、、。」
柏木が言うには、こうだ。
柏木が若い時、遊んでいて夜の街で知り合った男と出来てしまった。
その男とセックスして妊娠してしまい、結婚を持ちかけたら逃げられてしまい。
親からも絶縁され、女手一つで娘を育てあげた事。そのために、昼間はスーパーのパート夜は、水商売から
風俗。若い頃は働きずめで、自分の時間がなかった。
娘が中学を出ると、働かせ男も抱かせた。 子供ができたから、下ろすようにはましたら家出した事。
「壮絶ですね。」
「最低な母親でしょう。それでも娘が子供を産んだって、風の噂できいてね。会いたいな~て思っちゃって
自分が酷い事したのにね。 勝手でしょう。」
「いえ、そんな事は。」
言葉に詰まってしまう。
おかしい、ここまで揉んだら、どんなでも霊穴は視えるはず。どううする?
先生、悩んでるな~ 霊穴が視えないんだろうな。
手代木さんの時とおんなじ、それ以上だな。なんとか霊穴が視えるといいんだけど。
瞳ちゃんも、心配してくれてるな~ せっかくお守りもくれたのに。
俺は、水晶を握りながら、願った。(なんとかしてくれ~)
ポ~と水晶が光る、それと同時に霊穴がかすかに輝く
(輝圧だ。)
「柏木さん、ちょっと強く押すので、力抜いてくださ。」
全身全霊で霊穴を、輝圧する。
影が揺らぐも、その後の濃い影が押し込むかのように、戻される。
(なんだこれは?? クソッ!諦めないぞ!!)
さらに気を集中する。(よし!霊穴が視えた!!)輝圧だ。
「フウ―ッ! ハアー!」
外れた。戻らないようにすかさず霊体に輝圧をする。
濃い影が、また押し込もうとするので、霊体に輝圧をするも、また戻される。
気を集中できなくなってきた、今度押し戻されたら、もう外せないそう感じた。
”水晶を使え”
頭に声が響く。(水晶?これか!)
瞳ちゃんから貰った水晶の尖った部分で、霊穴を刺す ”輝刺”だ。
完璧に外れた、しかし、まだ纏わりついている。しばらくの間は憑依できないはずだ。
「柏木様、今日はここまでになります。」
「終了ですか? 身体は凄い軽いです。身体の冷たいのも取れたんですが、何か冷たいものが
近くにある感じがします。
「柏木様、今日はまだ何もいえません。もうしわけありません。」
「でも、私を信じてください!またいらしてください。解決してみせます。」
「わかりました。近いうちに、また来ます。」
「信じてもらえるんですか?」
「はい。普通なら理由を知りたくなりますし、信じられないと思います。」
「でも施術が終わったら、先生の事、何でも信じられるって思うんです。」
「ありがとうございます! 近いうちに必ず来てくださいね。お待ちしてます。」
柏木様は、お帰りになった。整体のお客様なら、必ず来いなんて言わない。
柏木様の心霊施術は、絶対に成功させてみせる!!
「先生、大丈夫ですか?」
「ああ、もう気もパワーもない。今日は店終いにしよう。」
「はい、でも手代木様と柏木様、どちらも困難ですが、どうするんですか?」
「早急に解決策を考えないとな、でも今日は助かったよ。」
「え?」
「瞳ちゃんの魔法の振子のおかげで、今日は乗り切ったよ。」
「本当に効くんですね?凄い!!」
「おいおい、効果あるからくれたんじゃないの?」
瞳ちゃんと話していると、和むな~。でも、なんとかしないと。
帰路につく
~夜、自宅~
自宅の部屋で、やっと落ち着く。
「あれが悪霊か~、なんかスゲーな~。瞳ちゃんの水晶と謎の声がなかったら、やられてたな~。」
おじいちゃんの日記を読んでも、心霊施術以外の事は書いてないな~。僕は霊能者じゃないしな。
どうすれば、いいんだろう?
”コン コン”
ノックと共に、父さんが入ってくる。
「レイト、ちょっといいか?」
「なに?父さん。」
「最近、何か変わった事はないか?」
「別に。」
医者の父さんに話しても、どうせ信じてくれないだろうし。
話す気にならなかった。
「そんなわけ、、、 ん? それは水晶鬼じゃないか?」
「水晶鬼?これが、これは土産物でペンデュラムという、占いの道具だよ。」
「お前、なんにも知らないのか?それは水晶鬼と言ってな、凄い力を持つ霊石なんだ。
石に選ばれた者にしか使えないし、その者のためにしか力を発揮しない。鬼をも倒す霊力があるという
しかし、気が弱まっている時や、使いすぎると石の取り込まれ鬼になるという、幻の霊具だ。」
なんだ、父さんは何を言ってるんだ。なぜ、父さんはこんな事を知ってるんだ。
頭の中が、ごちゃごちゃだ。
「どこで、手にいれた?」
「、、、。」
なんて言う? 父さんは医者だろう?ゆうなれば科学者だ、そんな父さんに話してどうなる?
その上、水晶を取り上げられたら、俺には どうしようも出来なくなる
手代木様も、柏木様も救えなくなる。
「レイト、話してくれ! 父さんは力になりたいんだ。」
「父さんに言ってもわからないよ。とうさんは医者だろ? 科学で証明できない事ってあるんだ。」
「父さんは、お前が心霊施術をしている事をしってる。」
「え?」
「お前が最近、いろんな者を背負い込んで帰ってきていた。それでも爺さんの日記で解決してきたん
だろう?でも、今日のは厄介だ、悪霊でも元人間じゃーない。 あれは魔の者だ。
お前にどうこうできるレベルじゃないと思って、声をかけたが、いらぬ世話だったな。
水晶鬼に爺さんまで付いている。」
「お爺ちゃんの日記、しってたの?」
「お前に見つかるようにおいたのは、私だ。」
「父さんが? それに父さん、どうしてそんなに詳しいの? お爺ちゃんの修業が厳しくてやめだと。たんだろ?」
「お前、父さんを何だとおもってるんだ? 途中で逃げ出す奴が医者になれるわけないだろ?」
「うん、まあ。」
「それに父さんは、爺さんの一番弟子で免許皆伝だぞ!」
「免許皆伝!?」
僕は驚いた、霊の事なってまったく信じてなくて、お爺ちゃんを毛嫌いしている父さんが免許皆伝だなんて。
そういえば、お爺ちゃんの日記に何人か弟子がいたが、免許皆伝は一人だけだと。それが父さん!
「じゃー、なんで?」
「父さんには爺さんを超えられないし、爺さん一人いれば十分だった。だから、父さんは医者になって多くの
人を救いたいとおもったんだ。それは、爺さんも納得済みだ。」
「なんで父さんの話しが、あんなになってたの?」
「それはな、母さんがお前を心配してだよ。父さんも爺さんも危険な目にあってるしな。」
「それよし、話してくれないか?」
僕は、父さんに全部 話した。
「そうか。お前は水晶鬼に選ばれたんだ。助手をとおして、お前の元に来た
使いこなすんだ。」
「でも、そうやって?」
「水晶鬼の使い方は、自分で見つけるしかないんだ。 選ばれた者にしか、できない事だ。」
「僕がえらばれた。そういえば父さん、おじいちゃんが付いてるって言ってたけど。どういう事?」
「お前、窮地に陥った時に、声がしただろう?」
「はじめて石の力を使った時も、聞こえた。」
「それは爺さんだよ。爺さんは今、守護霊としてお前にアドバイスをしている。」
「そうか、おじいちゃんが。」
思い出した。懐かしい声だった。僕の危機に必ず助言してくれていた。
お爺ちゃんは、いつも一緒なんだ。
「いいかレイト、お前は霊能者じゃない、爺さんみたいな拝み屋でも、私のような医者でもない。
お前は、心霊施術師だ! 自分のやり方で水晶鬼を使いこなし、解決するんだ。」
「ありがとう!父さん、僕がんばるよ!!」
「なにかあったら、何でもいい話してくれ! 親子なんだからな。」
「うん。」
父さんと話して、先が見えた感じがする。自分でもわかっていた事だ。
僕は霊能者ではない、心霊施術師だ!心霊施術するのみだ!!
~翌日~
レイトさん、今日はなんか違うな。何かあったのかな?
「先生、どうしたんですか?」
「ん?どうして?」
「なんかご機嫌というか、昨日と違って吹っ切れたみたい。」
「吹っ切れた?そうかもね。大きな味方と自信が持てた感じ。」
レイトさんの表情が明るい。私も嬉しい❤
「瞳ちゃん、心配かけたみたいだね。もう大丈夫、手代木様も柏木様も、どんとこい!」
二人で、笑いあう。
「先生、私、備品の買い物に行ってきますね。」
「ああ、行ってらっしゃい。」
瞳ちゃんが買い物に行ってから しばらくして、柏木様が来店された。
「こんにちは。」
「いらっしゃいませ。」
「なぜか、今日 来たいと思いましてきました。
「はい、今日で終わらせましょう。」
「今日は前半と後半と二回に分けて施術します。前半おわってから、お話しがあります。
まず前半、施術しましょう!」
「よろしくお願いします。」
この前は、いっぱい いっぱいで気ずかなかったんだけど、柏木様からローズの香りがする。
憑依のされ方が、手代木様に似ているな。柏木様が生霊をとばしてるとしたら、つじつまがあうな。
前回と同じ施術で、まず男性の霊を外す。柏木様には戻れないようにした。
よし、ここまでは順調。原因もだいたいわかった、ここからだ。
「柏木様、前半終了しましたので、一旦 休憩しましょう。」
「はい、ありがとうございます。」
気を蓄えたら、しめくくりだ! できれば手代木様がいればよかったが、そう思った時だ
瞳ちゃんが帰ってきた。
「ただいま帰りました~❤ 先生~、そこで手代木様と一緒になったので、お連れしました~」
「あっ、柏木様、いらしてたんですね。」
「先生、こんにちは~ 」
「えっ!? お母さん? なんでここに?」
「彩?彩なのかい?」
二人とも、驚いてるな。やっぱり親子だったか。
よし!役者はそろった、ここからが正念場だ! 二人に話して理解してもらえると施術しやすい
まず説明しよう!
二人は、ぎこちなく僕の話しを、きいている。
「まずお母さんは、お父さんがいなくなり家族からも絶縁され、孤独の中 彩さんを出産しました。
彩さんに辛くあたってはいましたが、自分がいなくなっても彩さんが一人でも生きていくだけど
力をつけるためにしていた事です。その時のお母さんは、いつ死んでもおかしくない状態でしたか
、彩さんが生きていく糧になってたんですね。」
そこまではなすと、柏木様は目をつむり、手代木様は柏木様をみつめていた。
「お母さん、文さんの旦那さんは、逃げたわけではないんです。」
「え?」
柏木様は、信じられないという顔で、僕をみた。
僕は、話しを続けた。
「旦那さ、柏木 哲さんは、心の優しい方です。親の反対を押し切って、夢をつかみに都会に出たんです。
都会は厳しく、騙されて身ぐるみを剥がされてしまって、一文無しになってしまったんです。
そんな時、渡世の人に声をかけられました。本当は騙すつもりで声をかけたのですが、哲さんがあまりにも
素直なので、舎弟というんですか、そんな間柄になったそうです。
渡世に生きるわけですから、汚い事もしましたし悪ぶってもいたようで、文さんと出会い子供ができたと知り
嬉しくて、兄貴分に言って粛清覚悟で足を洗うつもりだったようです。
話しに行く途中で、事故にあい亡くなられたそうです。 兄貴分の方は哲さんが文さんとの付き合いが本気と
わかり、足を洗わせるつもりだったそうで、文さんの居場所もわからないので、哲さんの葬儀も行われたそうです。」
柏木様が、話し出す。
「そんな事まで、わかるんですか?」
「哲さんが、教えてくれました。」
「あの人が?」
「文さんの横に、いらっしゃいますよ。とても心配してます。」
柏木様が、涙を流し 手代木様が方を抱く。
僕は、話しを続けた。 ここからが本筋だ。
「彩さんは、お母さんを憎んでいました。お母さんは娘さんを心配し、会いたいという思いが生霊として
彩さんの元に飛ばしてしまいました、そこを悪霊に付け込まれたんです。
それを哲さんが知り 文さんを守ろうとして文さんに付いたんですが、哲さんも悪霊と化してたんで
心配して付いても、悪霊憑依になってしまったんです。
哲さんは生前、渡世での働きのため恨みもかっていたので、悪霊に憑依されていたんです。哲さんの事故も
悪霊の仕業なんです。」
哲さんの霊が、驚きの表情をする。まさか、生きてる時から亡くなってまで悪霊憑依されてるとは思わないよな
彩さんも、文さんも絶句している。
「彩さんには、お母さんの生霊が付く事は無いです。お母さんへの憎しみがあると、今度は彩さんに悪霊が憑く
恐れがあります。
文さんにも、哲さんの憑かないようにしてありますが、権現の悪霊を何とかしない限り、哲さんを飲み込んで
直接、文さんに取り憑く可能性もあります。」
柏木様が、叫ぶ!
「先生、私はどうなってもいいから、彩だけは彩だけは救ってください!お願いします!」
「お母さん、お母さんはこれまで苦しんできた。もう充分、お母さんには幸せになって欲しい!」
「先生。お母さんをたすけて!」
手代木様も、柏木様を助けようと懇願する。
「大丈夫です。僕は二人共、救います。そして、哲さんを上にあげます。」
先生の気というか、オーラが凄い! これなら大丈夫だ。ペンデュラムも凄いパワーを出している。
私もおよばずながら、先生にパワーを送ろう!
瞳ちゃんのパワーが伝わってくる、手助けしてくれてるんだな。ありがとう!瞳ちゃん!!
「ここからは、哲さんの心霊施術をします。」
二人も驚いてるが、哲さんの霊も驚きを隠せないようだ。
「哲さんがここにいますので、彩さんと文さんで挟むように座ってください。」
「はい。」
「お二人で、哲さんを守るんです。絶対うまくいく、がんばりましょう!」
三人揃って、うなずく。
そうは言っても簡単な事ではない、初めての悪霊だし。今回は霊に憑いた悪霊を取り除くんだ。
お店も浄化してあるし、大丈夫だやってやる!
瞳ちゃんにも、お願いする。
「瞳ちゃん、サポートお願いできるかな?」
「はい❤任せてください!」
まずは哲さんをヒーリングで浄化をする。そして、サイキック・ウエーブ・マッサージだ。
気を強くして、波のようにエネルギーを送る。そうする事によって、触れる事のできない
哲さんの身体を揉み解す事が出来る。
ずいぶんやってるが、なかなか霊穴が視えない。家族の力が必要だ。
「文さん、哲さんとの楽しかった時を思い浮かべて、哲さんを助けると強く念じてください。」
「はい。哲さん、楽しかった。私には哲さんだけ、哲さんを救いたい。嫌 私が救う!」
「彩さん、彩さん哲さんい、会いたかった、一緒に過ごしたかったと念じてください。」
「お父さん、会いたかった お父さんと呼びたかった 思い出造りたかった お父さん!!」
先生の呼びかけに、手代木様も柏木様も強く念じてる。
なんだろう?二人から光が出て、哲さんを包んでいる。
「先生!」
「うん!」
視えた霊穴だ!!よし輝圧だ! 親指に気を集中して、霊穴を押す。
黒いモヤが浮き出てきた、凄い真っ黒だ! おかしい、霊体が外れない。いつもなら、これで外れるはず
もう一度、ダメだ何度やっても 外れない。
水晶鬼が光ってる、これは水晶鬼の力をつかわないとダメだって事だ。
どう使えばいいんだ。
”一刀両断”
おじいちゃんの声だ。そうか、水晶鬼を刀のように使って、切り離すんだな。
水晶鬼を高くあげ、剣道の面のように振り下ろす。
グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーー
切り離し成功だ! いよいよ姿を現すか?
「キャー。」
女性三人の悲鳴だ。
「なんだ、こりゃー?!」
僕はテレビで見る悪魔を想像していたが、(け、獣?) これは魔獣だ!
こいつが相手では、僕のやり方の名前を聞いて、霊を上げてやる事はできない。
言葉が通じないんだから、そもそも魔獣なんて、なんとかなるんだろうか?
「先生ー。」
「どうした?」
瞳ちゃんを見ると、魔獣が瞳ちゃんに取りつ憑こうとしている、水晶鬼をかざす
瞳ちゃんをガードする、今度は彩さんと文さんに取り憑こうとしている、水晶鬼がさらに輝き
二人を守る、二人に魔獣は視えてないが、感じてはいるようだ不安な表情だ。
「彩さん、文さん、大丈夫です。安心してください!」
「はい。」
魔獣は、向きを代え僕に迫ってきた。どうする水晶鬼は、三人を守るために使っている。
自分をガードできない。
もうダメだと思った時、眩い光が僕の前に立ち、魔獣を取り押さえた。
(おじいちゃんだ。)
そう思った時
”水晶鬼を使え”
僕は施術師だ、悪霊を倒すすべをしらない。いくら水晶鬼があっても、使い方がわからない。
「つかえたって、どう使えばいいの? おじいちゃん?」
”忍者のまじない”
忍者のまじない? 子供の頃 おじいちゃんが教えてくれた 忍者のおまじないか?
勇気のおまじない。
「オン マリシエイ ソバカ。」
おおー!やる気が出てきたし、なんだかパワーが気がみなぎってくる。(凄い!)
”早九字”
「早九字って、何?」
考えろ。あっ 九字切ってやつか。忍法だと思ってた。
「リン ピョウ えーっと、え~と何だっけ? ダメだ~わかんね~。」
「う~ん、それなら、これでどうだ!」
横縦横縦と、九回 水晶鬼で切った。 魔獣の動きが止まった。
”星”
これは、わかる ☆の形に、水晶鬼で切る。
あとからわかった事だが、これは陰陽道の ドーマン セーマン と言うらしい。
おじいちゃん、陰陽道になで精通してたんだ。
魔獣の眉間が赤く光る。(魔穴だ。) 僕は、魔穴に水晶鬼を突き刺す。
神圧、いや輝刺だ。
グエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
魔獣が唸り声をあげて、逃げていく
”任せろ”
おじいちゃんのか光体が、追いかけて行く。魔獣は、おじいちゃんがやっつけてくれるんだろう。
「先生、お疲れさまです。めっちゃ、怖かったですよ~」
瞳ちゃんが、抱き着いてくる。嬉しいけど、恥ずかしい二人もみてるし。
「瞳ちゃん、二人が見てるよ~」
「いいんです、怖かったんですから❤」
照れ隠しもあり、二人を見ると
「あなた。」
「お父さん。」
哲さんは、うんうんと頷きながら、二人を抱いている。
「あの~、視えてるんですか?」
「はい、あの時のままです。私はこんなにおばあちゃんなのに。」
「お父さん、めっちゃイケメン!自慢のお父さんです。」
哲さんは、笑顔のまま 僕の方を向き
”先生、ありがとうございます”
そう言って、上がっていった。
「あなた、後で行きますから、待っててくださいね。」
「お父さん、見守っていてね。」
瞳ちゃんは、貰い泣きをしている。一時はどうなる事かと思ったが、みんなの思いが伝わったんだな。
水晶鬼も本領発揮してくれたし、なんといってもおじいちゃんのお陰だ。
(ありがとうおじいちゃん)
「彩さん、文さん、これで施術完了です。今度 来店される時は、普通のお疲れにしてくださいね。
「先生、本当にありがとうございました。お陰様で娘と和解できました。」
「お母さん、若いだなんて。これからは一緒に住もうね。」
「いいのかい?」
「あたりまえでしょ! 孫の拓也にも会ってね。それから、お父さんのお墓に行きたい!」
「そうだね、きっとお父さんも、喜ぶよ。
瞳ちゃんが、話しに入ってくる。
「あの~、お二人は、どうして苗字が違うんですか?」
「瞳ちゃん、それは施術と関係ないし、お客様に失礼だよ。
「だって、気になって仕方ないんです~」
とプ~とふくれる。
「先生、いいんですよ。私は婚姻はしてなかったんですけど、哲さんの姓を名乗ってます。」
「私は、おばあちゃんの姓なんです。でもこれからは、柏木 あやです。」
「彩いいのかい?」
「だって、私はお母さんとお父さんの娘なんだから、当然よ。」
お店の中は、明るい笑い声に包まれた。
二人とも、最初と違って明るい顔で、仲良く帰られた。
「先生、良かったですね!」
「ああ、瞳ちゃんのお陰だよ!」
実際、瞳ちゃんが水晶鬼を持って来てくれなかったら、父さんからの話しも無かっただろうし
おじいちゃんも現れなかっただろうし、魔獣を退けることなんて、できなかった。
瞳ちゃんのぱわーも、後押ししてくれたしね。瞳ちゃんには感謝だ。
「そういえば、水晶鬼って言うんですね。」
「うん。石に選ばれた人間のためにしかつかえなくて、鬼をも倒す力があるらしいよ。」
「今回も、助かった。」
「ふ~ん、じゃー先生にあげて良かった。」
「アタシモ、センセイヲエランデルノニナ~」
「え?なんか言った?」
「何でもないです~❤」
レイトさんは、鈍感だから 私の気持ちには気付いてないんだろうな~
そんな、不器用なトコロも、好きなんだけどな~❤
~その夜~
コン コン
「レイト、いいか?」
父さんが、入ってくる。
「父さん、どうしたの?」
「今日は、大変だったらしいな。」
「え?」
「魔獣か?」
「どうしてそれを? 父さんには話してないよね?」
「私にも、霊視はできる。 それに、集中すれば今日 誰になにがあったかもわかる。
その能力で、病院でも色んな科の部長をやっている。
父さんには、すべてお見通しか。 でも何の用だろ?
「父さん、魔獣は凄かったよ! あんな魔獣相手にしたんだから、水晶鬼さえあれば、僕もおじいちゃんに
負けないよ。」
「その 爺さんに助けられたんだろう。」
「、、、。」
「爺さんが俺の所に来た。」
「おじいちゃんが?」
「ああ、危なっかしいから、見守って欲しいと。
おじいちゃん、心配してくれてるんだな。父さん位の力があれば、おじいちゃんと話せるのかな?
僕は、まだまだって事か。
「魔獣は、何とかできても魔者が出てくるようになったら、気をつけろ!」
「人間の悪霊も、気をつけるんだ。」
父さんは、何をいってるんだ? ライオンと人間ならライオンの方が怖いにきまってる。
魔者より魔獣の方が、厄介だろう?
「その顔は、納得してないな。」
「だって、魔獣の方が怖いし、厄介でしょ?」
「魔獣には、言葉が通じない。」
「言葉くらい、あっ!?」
「わかったようだな?」
そうだ、僕は名前を聞いて、上げてやるやり方だ。人間の霊なら、言葉で説得し霊穴をつく。
魔獣には、それが通用しなかった。水晶鬼にたいしても、どうしたらいいか、わからなかった。
「それになレイト、魔獣は思ったままに行動する。獣が腹減ったから、狩りをするように。
魔者は、知恵があり、ズルがしこい 魔獣より怖い。」
僕は、自分の無知を思い知った。
「レイト、お前がやっているのは、浄霊だ 徐霊じゃない。」
「浄霊と徐霊て、どう違うの?」
「言葉を変えよう、救霊だ。お前は不幸な霊のカウンセリングをして施術をして、上げてやっている。」
「僕は、心霊施術師だからね。」
「それはそれでいいんだが、悪霊や魔の物に科しては、時には普通の霊でも、問答無用で退けなければならい
相手によっては、消しさらねばならない。無だ。上がる事もやり直す事もできない。 無だ。
水晶鬼には、それが出来る。爺さんが九字切りを教えてもらってるだろう?」
「うん。」
「お前がその気になれば、真言など唱えなくても、一刀両断もできるし、消しさる事もできる。水晶鬼がお前を
選んだのだから、もしかするとこれからそんな経験をたくさんするから、水晶鬼と巡りあったのかもな。」
うわ~、これから怖い思いするのか~。父さんは想像で話す人じゃないから、ホントなんだろうな~
「父さん、水晶鬼って、なんなの?」
「私も詳しく知ってるわけじゃないんだが。空海や安倍清明より力のある退魔師が造ったといわれているが
その退魔師が水晶鬼になったんだと思ってる、だから持ち主を選ぶ。
あの爺さんでさえ、水晶鬼に巡りあえなかった。」
「でも、どうすればいいの?おじいちゃんだって無理だったのに。」
「お前は、選ばれたんだ。水晶鬼と一体になれるようにするんだ。使いながら覚えるんだよ。爺さんも力を
貸してくれるそうだ。」
「おじいちゃんが?」
「自分を信じろ、水晶鬼を念じろ、爺さんをよべ。」
それだけ言うと、父さんは部屋を出ていった。
本当に、そんなになるんだろうか? まるで霊能者みたいだよ。でも父さんもおじいちゃんも、霊能者としての
アドバイスはしてくれてないな~。心霊施術師として行動しろという事かな?
まあ、そうそうお店には来ないだろうし、こっちから首をつっこまなければ大丈夫だろう。
この時 僕は、こっちから出向くようになるとは思ってなかった。
予約してないから、また霊的な事か?と思い、入り口を見る。
そこには、野に咲く花のような可憐な少女が、立っていた。
「いらっしゃいませ。」
「ご無沙汰してます、先生!」
「来店された事ありますか?」
「忘れたんですか?私ですよ、レイトさん❤」
クスッと笑う。
「えっ、えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
岡崎瞳だ。前回の色情霊の時い心霊施術をした女の子だ。
「瞳ちゃん?」
「先生、忘れちゃうなんて、酷いですよ~。」
赤城麗子が憑依していたとはいえ、全くの別人だ。
まるでキャバ嬢がアイドルに変貌したのでは?と思うくらい違った。
「ど、どうしたの!? その格好??
「何、ビックリしてるんですか? これが本当の私なんですよ~。赤城麗子がいなくなったから、本当の自分に
戻れたんです。ちなみに大学生です。」
その日から岡崎瞳は、常連さんになった。
まだ若いし、そんなに施術しなくても、大丈夫なんだが、お客様が望んでいるのに断る事もない。
なにか、別な目的もあるような気もするけど。
~岡崎瞳が通うようになって、数日~
「先生、今日も気持ち良かったです❤」
「それは何より。」
「先生、今日の予約は?」
「いつもながら、無いよ。」
「そう落ち込まないで、私がきますから。」
ハハハ
突然。店の扉が開く
「予約してないんですけど、大丈夫でしょうか?」
「少々お待ちください。」
「先生、またきますね。」
「うん瞳ちゃん、またね。」
レイトさんに挨拶をして店を出ようとした時に、客とすれ違った時、ゾクッとした。
私は、赤城麗子に憑依されてから、霊媒体質になったらしい。霊の存在もわかるし、視えるようになった。
(レイトさん、大丈夫かな?)後ろ髪を惹かれる思いで、店を後にした。
~店内~
「お名前と、症状をお聞かせください。」
「手代木 彩 と言います。 毎日しんどくて、肩も重くて 冷えもあります。」
「お辛いですね。 がんばって、施術しますね。」
突然来店された事といい、症状からいうと霊障かな~?
決めつけはよくないから、じっくり視てみよう。
かなり凝っているな、身体も冷えている。
揉んでも揉んでも、血行が良くなっている気がしない。まるで手ごたえが無い。
(ヒーリングしてみるか。)
ヒーリングとは、気功のようなもので、まあ癒しのパワーだ。
「ゆ~っくり深呼吸してくださいね。」
深呼吸する事で、エネルギーを身体の隅々まで巡らせる。
すると、薄いモヤが浮き出てきた。
そして、”ヒーリング ウエーブ ケア”
掌全体で波のように揉みながら、エネルギーを流し込む。
「先生、身体が暖かくなってきました。」
「血行が良くなってきてますね。」
うっすらと、霊穴が視えた。こんな事は初めてだが、とにかく輝圧だ。
薄いモヤが消えた。
だが、これ以上は、何も変わらないし、何もわからない。
(これは通ってもらうしかないな。)
霊の事言っても、変に思われるだけだし。何とか通ってもらえないかな?
「今日は終わりになります。しばらく通ってもらえますか?」
「凄い軽くなりました。ありがとうございました。」
「次回の予約を取っていきますか?」
「もう大丈夫だと思います。また辛くなったら、来ますね。」
取り繕う暇もなく、手代木様は出ていかれた。
(どうしよう?)
身体が楽になったのなら、整体師としての仕事は終わりだ。
しかし、間違いなく霊障だ。このままでは、また不調になるし もっと酷い事になるかもしれない。
「先生~。」
岡崎瞳が、入ってくる。
「瞳ちゃん。」
「先生、さっきのお客さん、だいじょうぶでした?」
「えっ?」
「あれ、霊障ですよね?」
「瞳ちゃん、わかるの?」
「赤城麗子の件から、視たり感じたりするようになったんです。」
私は、先生にあれからの事を話した。
「そうか。で、何がわかったの?」
「完璧にじゃないんですけど。彼女の後ろをつけるように、人型のモヤが入っていったの?。」
「まるで、ストーカーみたいに。」
「ストーカーか~、とりあえず外したけど。手代木様が また来店されない限りどうしようもないよ。」
先生、思い悩んでるな~。一人で考えるのはよくないよね!
「すいません。」
中年の女性が、突然入ってくる。予約制の店なのに、突然来る人が多いな~
「あっ、お客さんいたんですね?また来ます。」
「お客様、大丈夫です。あっ、お待ちください。」
中年の女性は出ていってしまった。急いで入り口に向かったが、もういない。
(まさか霊か?)
瞳に聞こうとしたが、何か考えていてきずいてないようだ。
(ま、いいか。)
「先生!」
瞳が、突然叫ぶので、ビックリしていると
「先生、ここで私を雇ってください!!」
先生を助けるために、私は先生のそばにいたい。それには、ここで働くのが一番だ。
「え?瞳ちゃん、大学生でしょ?」
「バイトでもいいです。」
「瞳ちゃん、わかるだろ?人を雇えるほど、繁盛してないんだよ。」
「じゃあ、弟子にしてください! なんなら受講料も払います!」
瞳ちゃんは、どうして働きたがるんだ?受講料払うって事は、お金に困ってるわけじゃないしな~
僕も瞳ちゃんといると楽しいし、霊感もついたみたいだから、いいかな。
「好きな時に来ていいよ、瞳ちゃん。」
「本当ですか?」
「もちろん!でも、受講料はいらないよ。」
「でも~。」
「そのかわり、お手伝いしてくれれば、それでいいよ。」
「はい!よろしくお願いしま~す!」
凄い笑顔だ、この笑顔が毎日見れるなら、僕もうれしい!
~数日後~
私も、ここの業務には慣れてきた。まあ施術はさせてもらえないけどね。
お客様も増えてきている、男性のお客様ばかりなんだけどね~
看板娘の役割を果たしてるのかな?私を指名されるとこまるけどね。
一人のお客様が、入ってくる。
「いらっしゃいまで❤」
「あの~、先生はいらっしゃいますか?」
「先生ですか?少々お待ちください。」
「せんせ~い!お客様、ご来店で~す!」
「はい、あっ手代木様、どうされました。?」
「あの~、しばらく調子良かったんですけど。また調子悪くて、それに黒い影が追ってくるの。」
「影?」
「はい、変だって思わないでくださいね。 幽霊みたい、家の中や職場にまで現れるんです。」
(本人に気が付かれるまでに、なったか。 とりあえず、今 憑いてるぶんだけでもはずすか。)
それだけでも、今の症状は取れるだろう。
「では施術しますので、うつ伏せになってください。」
「はい。」
一通りの施術は終える。身体の不調はとれただろう。
問題は、これからだ。
「では先生ありがとうございました。」
「手代木様、お待ちください。 これでは、また同じくなります。」
「じゃあ、どうすればいいんですか? 私、もうこんなのは嫌なんです。」
「では、これまでの事を教えてください。」
「これまでの事?」
「はい、これは霊障です。 ご自分でもわかってらっしゃるでしょう?」
「信じてくれるの?」
「信じます。話してください、それが解決への糸口をみつけだします。」
手代木様は、少し目線を下ろすと語りはじめた。
「私、母親と絶縁しているんです。 母は若い時、遊んでばかりいたんです。
ゆきずりの男とセックスをして、私ができた。 父に妊娠の事を話すと
父は逃げた。そして、車に引かれてなくなったんです。
まだ若かった母親は、両親とも絶縁し一人で私を育てました。でも母の
口癖は(お前がいなければ。)です。」
少し、口ごもる。
「私、中学を出て働きました。母に認めてもらいたくて。 給料も全部 母に
渡したんです。母も喜んでくれると思った。 母は私に費やした時間を
取り戻すように、遊びまくりました。 私は母の遊ぶ金のために働いた。
ある時、私はレイプされた。そして、妊娠した。 産もうと思ったけど
母は私に子供を下ろすように言ったんです。 働き手がいなくなるから
私は、亡くなったお婆ちゃんの姓をなのり、シェルターで世話になりながら、出産子育てをしました。
死にもの狂いで、働きました。
それからです、黒い影が付きまとうようになったのは。」
手代木が話し終えると、ハッキリと黒い影が浮きでる。
(見えた、霊穴だ!)
「手代木様、失礼します。」
手代木の霊穴に、気を集中して輝圧をする。
霊体が離れる、すかさず心霊施術をしようとしたら、消えた。
「え?」
「先生、どうしたんですか?」
「確実に、霊体は離しました。 霊体をあげようとしたら、消えたんです。」
「消えた?」
「はい、三体いました。女性の霊体、これは生霊です。 そこに悪霊がいたんですが一体の
悪霊から守るように、もう一体の悪霊が女性の生霊を連れ去ったんです。」
「なんでそんなに?」
「瞳ちゃん、わかる?」
僕は、岡崎瞳に聞いてみた。こういった事は、瞳の方が得意だ。
「私の感じたままで、いいですか?」
「それでいいよ。 瞳ちゃん、お願い。」
私の心霊整体 初仕事だ!レイトさんにも頼られてるし、頑張るぞ!!
「女性は50歳代で、派手な身なりをしています。 薔薇の香りがキツイですね。
男性は、若いけど昔風の人ですね。 この方は、真面目だけど見かけがチャラい。
もう一体は、人ではないですね。 おどろおどろしく、邪悪な感じがします。」
「瞳ちゃん、ありがとう!」
「手代木様、心当たりありますか?」
「多分、女の霊は母です。 遊ぶようになってから、派手になり薔薇の香水がキツクて
やめるように言っても聞いてくれませんでした。 男性はわかりません。」
「これまでの話しで視えてきたんですが。」
「聞く覚悟ありますか?」
「大丈夫です。話してください。」
手代木の覚悟は固いようだ、僕も覚悟をして話す。
「女性はお母さんで、間違いないと思います。 男性はお父さんですね。」
「父ですか?」
「はい、お父さんは悪霊に死に追いやられてますね。 お父さんの次の
ターゲットが、お母さん。 お父さんは お母さんを守ろうとしてますが
悪霊化しているので、悲しいかな悪霊憑依になってしまってるんです。」
これは、厄介だな。
「どうすればいいんですか?」
「完全に離れてるので、手代木様自身はしばらく大丈夫なはずです。
ただ、お母さんがより酷くなります。」
「母は自業自得です。」
「本当に、そう思いますか? お母さんは、もっと苦しむ事になります。
すると、また生霊が手代木様、あなたに来るかもしれませんよ。」
手代木の表情が悲しみに変わって、一滴の涙を流す。
「私、母が私をどんな思いをして、私を育ててくれたか覚えてます。
お母さんに認めて欲しかった、子供を抱いて欲しいと思ってます。」
「彩さんの思いは、お母さんに届きますよ。 ただ、お母さんに心霊施術を
しないとなりません。」
「お母さんが、どこにいるのかわからないんです。」
「大丈夫です。 彩さんがここにきたのは必然的なんです。必ずお母さんに
会えます。それは、そう遠くないです。」
「また来てください。今度はお子さんと一緒に。」
「はい。」
手代木様は、わずかな希望を持って帰られた。
「先生。」
「ん?どうしたの瞳ちゃん。」
「私、お母さんがここに来店されると思うんです。」
「そうだね。 でも助かったよ、瞳ちゃんの霊視がないと、あそこまでは
わからなかったよ。」
私には、霊視ができたのかどうか、わからない。でもレイトさんの力になれた
事がうれしかった。
~その夜~
「悪霊か~、悪霊なんか僕に何とかできるのかな~? お父さんの霊ならなんとか
なると思うんだけど。その後にいる得体の知れない奴がな~。何者かもわからない
し、どうしたものかな~。
♪ピロリン♪
岡崎瞳から、メールが来た。
✉”先生、今日はご苦労さまでした。悪霊なんて、私ビックリしちゃいました。でも
先生なら、大丈夫ですよね?がんばってくださいね❤応援してます❤ 瞳”
「瞳ちゃんから、そう言われたら、がんばらなきゃな!」
こんな時こそ、おじいちゃんの日記だ!
何々、生霊は生霊を飛ばしてる相手を心霊施術すればいいのか、いつもと一緒か
それで、悪霊払いはーと
「何だよこれ、肝心な所が破けてんじゃん、おじいちゃーん!」
いろんな本を読んでみたし、ネットでも調べた。霊能者に頼むしかないのか?
それじゃー、なんのために今までやってきたのか、手代木様をこのまま見捨てる
わけにもいかないしな~。僕は霊能者ない、整体師だ。
そうだ、僕は心霊整体師だ、僕のやり方で手代木様を救うんだ。瞳ちゃんだって
救えたんだ、大丈夫だやれる!よし!やってやる!!
「でも、盛り塩はしよう!」
~数日後~
「おはようございま~す❤」
「あれ?瞳ちゃん、どうしたの?」
「今日、学校 休校日なんです。それに、今日あたり手代木様来そうだから、手代木様には
慰めが必要です。先生、不器用だから。」
休校日なんていうのは嘘だ。朝から胸騒ぎがするのだ、先生には私の力が必要になると思う。
レイトさんの助けになるなら、私、なんだってするつもり。
今日は、レイトさんの傍にいたい。
「ありがとう!瞳ちゃん。」
「先生、これプレゼントです。」
瞳から、小さい箱を受け取り、中身を取り出す。
「水晶?」
「水晶には魔除けの効果もあるっていうし、ペンデュラムって言って魔法の振子なんだそうですよ。
何か先生にあげたくなっちゃって。」
「ありがとう!大事にするよ。」
ここに来る途中古めかしいお店でみつけた。何か、凄い必要な感じになって買った。
レイトさんために役に立つ、そんな気がしたから。
「こんにちは。」
手代木様、来店されたな。
「いらっしゃいませ~。」
「ん?」
手代木様ではなかった。 年配の女性だ。(うっ?)これは霊障だ。
間違いない。
「先生~」
瞳も、感じたらしい。不安げに、こちらを見る。
顔に出さないようにしないとな。
「今日は、どうされました?」
「予約してないんですけど、身体が酷く冷たくて重いんです。 これって血行わるいんですよね?
病院に行くよりはって思いまして。 大丈夫ですか?」
「柏木 文です。」
「では、柏木様、うつ伏せでお願いします。」
柏木か、手代木 彩 が、頭をよぎった。 今日、手代木様がいらしたら、もうどうにもできないぞ。
黒い闇に包まれて、ほとんど柏木の身体が見えない。これは大変だ。
とりあえず施術しながら、考えよう。
「かなりお疲れですね~、血行も悪いですよ。」
「そうですよね? でも、気持ちいいです。」
まったく、血行が良くならない。 身体も固いままだ。
手代木様の倍は、凄い。いったいどんな霊なんだ、やっぱり事情聞かないと視えないな。
「何か悩み事とか、お疲れの原因って、ありますか?」
「悩み事ですか?」
「はい、悩み事とかあると、それがストレスとなって、凝りや不調の原因になる事があるんです。」
「実は、、、。」
柏木が言うには、こうだ。
柏木が若い時、遊んでいて夜の街で知り合った男と出来てしまった。
その男とセックスして妊娠してしまい、結婚を持ちかけたら逃げられてしまい。
親からも絶縁され、女手一つで娘を育てあげた事。そのために、昼間はスーパーのパート夜は、水商売から
風俗。若い頃は働きずめで、自分の時間がなかった。
娘が中学を出ると、働かせ男も抱かせた。 子供ができたから、下ろすようにはましたら家出した事。
「壮絶ですね。」
「最低な母親でしょう。それでも娘が子供を産んだって、風の噂できいてね。会いたいな~て思っちゃって
自分が酷い事したのにね。 勝手でしょう。」
「いえ、そんな事は。」
言葉に詰まってしまう。
おかしい、ここまで揉んだら、どんなでも霊穴は視えるはず。どううする?
先生、悩んでるな~ 霊穴が視えないんだろうな。
手代木さんの時とおんなじ、それ以上だな。なんとか霊穴が視えるといいんだけど。
瞳ちゃんも、心配してくれてるな~ せっかくお守りもくれたのに。
俺は、水晶を握りながら、願った。(なんとかしてくれ~)
ポ~と水晶が光る、それと同時に霊穴がかすかに輝く
(輝圧だ。)
「柏木さん、ちょっと強く押すので、力抜いてくださ。」
全身全霊で霊穴を、輝圧する。
影が揺らぐも、その後の濃い影が押し込むかのように、戻される。
(なんだこれは?? クソッ!諦めないぞ!!)
さらに気を集中する。(よし!霊穴が視えた!!)輝圧だ。
「フウ―ッ! ハアー!」
外れた。戻らないようにすかさず霊体に輝圧をする。
濃い影が、また押し込もうとするので、霊体に輝圧をするも、また戻される。
気を集中できなくなってきた、今度押し戻されたら、もう外せないそう感じた。
”水晶を使え”
頭に声が響く。(水晶?これか!)
瞳ちゃんから貰った水晶の尖った部分で、霊穴を刺す ”輝刺”だ。
完璧に外れた、しかし、まだ纏わりついている。しばらくの間は憑依できないはずだ。
「柏木様、今日はここまでになります。」
「終了ですか? 身体は凄い軽いです。身体の冷たいのも取れたんですが、何か冷たいものが
近くにある感じがします。
「柏木様、今日はまだ何もいえません。もうしわけありません。」
「でも、私を信じてください!またいらしてください。解決してみせます。」
「わかりました。近いうちに、また来ます。」
「信じてもらえるんですか?」
「はい。普通なら理由を知りたくなりますし、信じられないと思います。」
「でも施術が終わったら、先生の事、何でも信じられるって思うんです。」
「ありがとうございます! 近いうちに必ず来てくださいね。お待ちしてます。」
柏木様は、お帰りになった。整体のお客様なら、必ず来いなんて言わない。
柏木様の心霊施術は、絶対に成功させてみせる!!
「先生、大丈夫ですか?」
「ああ、もう気もパワーもない。今日は店終いにしよう。」
「はい、でも手代木様と柏木様、どちらも困難ですが、どうするんですか?」
「早急に解決策を考えないとな、でも今日は助かったよ。」
「え?」
「瞳ちゃんの魔法の振子のおかげで、今日は乗り切ったよ。」
「本当に効くんですね?凄い!!」
「おいおい、効果あるからくれたんじゃないの?」
瞳ちゃんと話していると、和むな~。でも、なんとかしないと。
帰路につく
~夜、自宅~
自宅の部屋で、やっと落ち着く。
「あれが悪霊か~、なんかスゲーな~。瞳ちゃんの水晶と謎の声がなかったら、やられてたな~。」
おじいちゃんの日記を読んでも、心霊施術以外の事は書いてないな~。僕は霊能者じゃないしな。
どうすれば、いいんだろう?
”コン コン”
ノックと共に、父さんが入ってくる。
「レイト、ちょっといいか?」
「なに?父さん。」
「最近、何か変わった事はないか?」
「別に。」
医者の父さんに話しても、どうせ信じてくれないだろうし。
話す気にならなかった。
「そんなわけ、、、 ん? それは水晶鬼じゃないか?」
「水晶鬼?これが、これは土産物でペンデュラムという、占いの道具だよ。」
「お前、なんにも知らないのか?それは水晶鬼と言ってな、凄い力を持つ霊石なんだ。
石に選ばれた者にしか使えないし、その者のためにしか力を発揮しない。鬼をも倒す霊力があるという
しかし、気が弱まっている時や、使いすぎると石の取り込まれ鬼になるという、幻の霊具だ。」
なんだ、父さんは何を言ってるんだ。なぜ、父さんはこんな事を知ってるんだ。
頭の中が、ごちゃごちゃだ。
「どこで、手にいれた?」
「、、、。」
なんて言う? 父さんは医者だろう?ゆうなれば科学者だ、そんな父さんに話してどうなる?
その上、水晶を取り上げられたら、俺には どうしようも出来なくなる
手代木様も、柏木様も救えなくなる。
「レイト、話してくれ! 父さんは力になりたいんだ。」
「父さんに言ってもわからないよ。とうさんは医者だろ? 科学で証明できない事ってあるんだ。」
「父さんは、お前が心霊施術をしている事をしってる。」
「え?」
「お前が最近、いろんな者を背負い込んで帰ってきていた。それでも爺さんの日記で解決してきたん
だろう?でも、今日のは厄介だ、悪霊でも元人間じゃーない。 あれは魔の者だ。
お前にどうこうできるレベルじゃないと思って、声をかけたが、いらぬ世話だったな。
水晶鬼に爺さんまで付いている。」
「お爺ちゃんの日記、しってたの?」
「お前に見つかるようにおいたのは、私だ。」
「父さんが? それに父さん、どうしてそんなに詳しいの? お爺ちゃんの修業が厳しくてやめだと。たんだろ?」
「お前、父さんを何だとおもってるんだ? 途中で逃げ出す奴が医者になれるわけないだろ?」
「うん、まあ。」
「それに父さんは、爺さんの一番弟子で免許皆伝だぞ!」
「免許皆伝!?」
僕は驚いた、霊の事なってまったく信じてなくて、お爺ちゃんを毛嫌いしている父さんが免許皆伝だなんて。
そういえば、お爺ちゃんの日記に何人か弟子がいたが、免許皆伝は一人だけだと。それが父さん!
「じゃー、なんで?」
「父さんには爺さんを超えられないし、爺さん一人いれば十分だった。だから、父さんは医者になって多くの
人を救いたいとおもったんだ。それは、爺さんも納得済みだ。」
「なんで父さんの話しが、あんなになってたの?」
「それはな、母さんがお前を心配してだよ。父さんも爺さんも危険な目にあってるしな。」
「それよし、話してくれないか?」
僕は、父さんに全部 話した。
「そうか。お前は水晶鬼に選ばれたんだ。助手をとおして、お前の元に来た
使いこなすんだ。」
「でも、そうやって?」
「水晶鬼の使い方は、自分で見つけるしかないんだ。 選ばれた者にしか、できない事だ。」
「僕がえらばれた。そういえば父さん、おじいちゃんが付いてるって言ってたけど。どういう事?」
「お前、窮地に陥った時に、声がしただろう?」
「はじめて石の力を使った時も、聞こえた。」
「それは爺さんだよ。爺さんは今、守護霊としてお前にアドバイスをしている。」
「そうか、おじいちゃんが。」
思い出した。懐かしい声だった。僕の危機に必ず助言してくれていた。
お爺ちゃんは、いつも一緒なんだ。
「いいかレイト、お前は霊能者じゃない、爺さんみたいな拝み屋でも、私のような医者でもない。
お前は、心霊施術師だ! 自分のやり方で水晶鬼を使いこなし、解決するんだ。」
「ありがとう!父さん、僕がんばるよ!!」
「なにかあったら、何でもいい話してくれ! 親子なんだからな。」
「うん。」
父さんと話して、先が見えた感じがする。自分でもわかっていた事だ。
僕は霊能者ではない、心霊施術師だ!心霊施術するのみだ!!
~翌日~
レイトさん、今日はなんか違うな。何かあったのかな?
「先生、どうしたんですか?」
「ん?どうして?」
「なんかご機嫌というか、昨日と違って吹っ切れたみたい。」
「吹っ切れた?そうかもね。大きな味方と自信が持てた感じ。」
レイトさんの表情が明るい。私も嬉しい❤
「瞳ちゃん、心配かけたみたいだね。もう大丈夫、手代木様も柏木様も、どんとこい!」
二人で、笑いあう。
「先生、私、備品の買い物に行ってきますね。」
「ああ、行ってらっしゃい。」
瞳ちゃんが買い物に行ってから しばらくして、柏木様が来店された。
「こんにちは。」
「いらっしゃいませ。」
「なぜか、今日 来たいと思いましてきました。
「はい、今日で終わらせましょう。」
「今日は前半と後半と二回に分けて施術します。前半おわってから、お話しがあります。
まず前半、施術しましょう!」
「よろしくお願いします。」
この前は、いっぱい いっぱいで気ずかなかったんだけど、柏木様からローズの香りがする。
憑依のされ方が、手代木様に似ているな。柏木様が生霊をとばしてるとしたら、つじつまがあうな。
前回と同じ施術で、まず男性の霊を外す。柏木様には戻れないようにした。
よし、ここまでは順調。原因もだいたいわかった、ここからだ。
「柏木様、前半終了しましたので、一旦 休憩しましょう。」
「はい、ありがとうございます。」
気を蓄えたら、しめくくりだ! できれば手代木様がいればよかったが、そう思った時だ
瞳ちゃんが帰ってきた。
「ただいま帰りました~❤ 先生~、そこで手代木様と一緒になったので、お連れしました~」
「あっ、柏木様、いらしてたんですね。」
「先生、こんにちは~ 」
「えっ!? お母さん? なんでここに?」
「彩?彩なのかい?」
二人とも、驚いてるな。やっぱり親子だったか。
よし!役者はそろった、ここからが正念場だ! 二人に話して理解してもらえると施術しやすい
まず説明しよう!
二人は、ぎこちなく僕の話しを、きいている。
「まずお母さんは、お父さんがいなくなり家族からも絶縁され、孤独の中 彩さんを出産しました。
彩さんに辛くあたってはいましたが、自分がいなくなっても彩さんが一人でも生きていくだけど
力をつけるためにしていた事です。その時のお母さんは、いつ死んでもおかしくない状態でしたか
、彩さんが生きていく糧になってたんですね。」
そこまではなすと、柏木様は目をつむり、手代木様は柏木様をみつめていた。
「お母さん、文さんの旦那さんは、逃げたわけではないんです。」
「え?」
柏木様は、信じられないという顔で、僕をみた。
僕は、話しを続けた。
「旦那さ、柏木 哲さんは、心の優しい方です。親の反対を押し切って、夢をつかみに都会に出たんです。
都会は厳しく、騙されて身ぐるみを剥がされてしまって、一文無しになってしまったんです。
そんな時、渡世の人に声をかけられました。本当は騙すつもりで声をかけたのですが、哲さんがあまりにも
素直なので、舎弟というんですか、そんな間柄になったそうです。
渡世に生きるわけですから、汚い事もしましたし悪ぶってもいたようで、文さんと出会い子供ができたと知り
嬉しくて、兄貴分に言って粛清覚悟で足を洗うつもりだったようです。
話しに行く途中で、事故にあい亡くなられたそうです。 兄貴分の方は哲さんが文さんとの付き合いが本気と
わかり、足を洗わせるつもりだったそうで、文さんの居場所もわからないので、哲さんの葬儀も行われたそうです。」
柏木様が、話し出す。
「そんな事まで、わかるんですか?」
「哲さんが、教えてくれました。」
「あの人が?」
「文さんの横に、いらっしゃいますよ。とても心配してます。」
柏木様が、涙を流し 手代木様が方を抱く。
僕は、話しを続けた。 ここからが本筋だ。
「彩さんは、お母さんを憎んでいました。お母さんは娘さんを心配し、会いたいという思いが生霊として
彩さんの元に飛ばしてしまいました、そこを悪霊に付け込まれたんです。
それを哲さんが知り 文さんを守ろうとして文さんに付いたんですが、哲さんも悪霊と化してたんで
心配して付いても、悪霊憑依になってしまったんです。
哲さんは生前、渡世での働きのため恨みもかっていたので、悪霊に憑依されていたんです。哲さんの事故も
悪霊の仕業なんです。」
哲さんの霊が、驚きの表情をする。まさか、生きてる時から亡くなってまで悪霊憑依されてるとは思わないよな
彩さんも、文さんも絶句している。
「彩さんには、お母さんの生霊が付く事は無いです。お母さんへの憎しみがあると、今度は彩さんに悪霊が憑く
恐れがあります。
文さんにも、哲さんの憑かないようにしてありますが、権現の悪霊を何とかしない限り、哲さんを飲み込んで
直接、文さんに取り憑く可能性もあります。」
柏木様が、叫ぶ!
「先生、私はどうなってもいいから、彩だけは彩だけは救ってください!お願いします!」
「お母さん、お母さんはこれまで苦しんできた。もう充分、お母さんには幸せになって欲しい!」
「先生。お母さんをたすけて!」
手代木様も、柏木様を助けようと懇願する。
「大丈夫です。僕は二人共、救います。そして、哲さんを上にあげます。」
先生の気というか、オーラが凄い! これなら大丈夫だ。ペンデュラムも凄いパワーを出している。
私もおよばずながら、先生にパワーを送ろう!
瞳ちゃんのパワーが伝わってくる、手助けしてくれてるんだな。ありがとう!瞳ちゃん!!
「ここからは、哲さんの心霊施術をします。」
二人も驚いてるが、哲さんの霊も驚きを隠せないようだ。
「哲さんがここにいますので、彩さんと文さんで挟むように座ってください。」
「はい。」
「お二人で、哲さんを守るんです。絶対うまくいく、がんばりましょう!」
三人揃って、うなずく。
そうは言っても簡単な事ではない、初めての悪霊だし。今回は霊に憑いた悪霊を取り除くんだ。
お店も浄化してあるし、大丈夫だやってやる!
瞳ちゃんにも、お願いする。
「瞳ちゃん、サポートお願いできるかな?」
「はい❤任せてください!」
まずは哲さんをヒーリングで浄化をする。そして、サイキック・ウエーブ・マッサージだ。
気を強くして、波のようにエネルギーを送る。そうする事によって、触れる事のできない
哲さんの身体を揉み解す事が出来る。
ずいぶんやってるが、なかなか霊穴が視えない。家族の力が必要だ。
「文さん、哲さんとの楽しかった時を思い浮かべて、哲さんを助けると強く念じてください。」
「はい。哲さん、楽しかった。私には哲さんだけ、哲さんを救いたい。嫌 私が救う!」
「彩さん、彩さん哲さんい、会いたかった、一緒に過ごしたかったと念じてください。」
「お父さん、会いたかった お父さんと呼びたかった 思い出造りたかった お父さん!!」
先生の呼びかけに、手代木様も柏木様も強く念じてる。
なんだろう?二人から光が出て、哲さんを包んでいる。
「先生!」
「うん!」
視えた霊穴だ!!よし輝圧だ! 親指に気を集中して、霊穴を押す。
黒いモヤが浮き出てきた、凄い真っ黒だ! おかしい、霊体が外れない。いつもなら、これで外れるはず
もう一度、ダメだ何度やっても 外れない。
水晶鬼が光ってる、これは水晶鬼の力をつかわないとダメだって事だ。
どう使えばいいんだ。
”一刀両断”
おじいちゃんの声だ。そうか、水晶鬼を刀のように使って、切り離すんだな。
水晶鬼を高くあげ、剣道の面のように振り下ろす。
グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーー
切り離し成功だ! いよいよ姿を現すか?
「キャー。」
女性三人の悲鳴だ。
「なんだ、こりゃー?!」
僕はテレビで見る悪魔を想像していたが、(け、獣?) これは魔獣だ!
こいつが相手では、僕のやり方の名前を聞いて、霊を上げてやる事はできない。
言葉が通じないんだから、そもそも魔獣なんて、なんとかなるんだろうか?
「先生ー。」
「どうした?」
瞳ちゃんを見ると、魔獣が瞳ちゃんに取りつ憑こうとしている、水晶鬼をかざす
瞳ちゃんをガードする、今度は彩さんと文さんに取り憑こうとしている、水晶鬼がさらに輝き
二人を守る、二人に魔獣は視えてないが、感じてはいるようだ不安な表情だ。
「彩さん、文さん、大丈夫です。安心してください!」
「はい。」
魔獣は、向きを代え僕に迫ってきた。どうする水晶鬼は、三人を守るために使っている。
自分をガードできない。
もうダメだと思った時、眩い光が僕の前に立ち、魔獣を取り押さえた。
(おじいちゃんだ。)
そう思った時
”水晶鬼を使え”
僕は施術師だ、悪霊を倒すすべをしらない。いくら水晶鬼があっても、使い方がわからない。
「つかえたって、どう使えばいいの? おじいちゃん?」
”忍者のまじない”
忍者のまじない? 子供の頃 おじいちゃんが教えてくれた 忍者のおまじないか?
勇気のおまじない。
「オン マリシエイ ソバカ。」
おおー!やる気が出てきたし、なんだかパワーが気がみなぎってくる。(凄い!)
”早九字”
「早九字って、何?」
考えろ。あっ 九字切ってやつか。忍法だと思ってた。
「リン ピョウ えーっと、え~と何だっけ? ダメだ~わかんね~。」
「う~ん、それなら、これでどうだ!」
横縦横縦と、九回 水晶鬼で切った。 魔獣の動きが止まった。
”星”
これは、わかる ☆の形に、水晶鬼で切る。
あとからわかった事だが、これは陰陽道の ドーマン セーマン と言うらしい。
おじいちゃん、陰陽道になで精通してたんだ。
魔獣の眉間が赤く光る。(魔穴だ。) 僕は、魔穴に水晶鬼を突き刺す。
神圧、いや輝刺だ。
グエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
魔獣が唸り声をあげて、逃げていく
”任せろ”
おじいちゃんのか光体が、追いかけて行く。魔獣は、おじいちゃんがやっつけてくれるんだろう。
「先生、お疲れさまです。めっちゃ、怖かったですよ~」
瞳ちゃんが、抱き着いてくる。嬉しいけど、恥ずかしい二人もみてるし。
「瞳ちゃん、二人が見てるよ~」
「いいんです、怖かったんですから❤」
照れ隠しもあり、二人を見ると
「あなた。」
「お父さん。」
哲さんは、うんうんと頷きながら、二人を抱いている。
「あの~、視えてるんですか?」
「はい、あの時のままです。私はこんなにおばあちゃんなのに。」
「お父さん、めっちゃイケメン!自慢のお父さんです。」
哲さんは、笑顔のまま 僕の方を向き
”先生、ありがとうございます”
そう言って、上がっていった。
「あなた、後で行きますから、待っててくださいね。」
「お父さん、見守っていてね。」
瞳ちゃんは、貰い泣きをしている。一時はどうなる事かと思ったが、みんなの思いが伝わったんだな。
水晶鬼も本領発揮してくれたし、なんといってもおじいちゃんのお陰だ。
(ありがとうおじいちゃん)
「彩さん、文さん、これで施術完了です。今度 来店される時は、普通のお疲れにしてくださいね。
「先生、本当にありがとうございました。お陰様で娘と和解できました。」
「お母さん、若いだなんて。これからは一緒に住もうね。」
「いいのかい?」
「あたりまえでしょ! 孫の拓也にも会ってね。それから、お父さんのお墓に行きたい!」
「そうだね、きっとお父さんも、喜ぶよ。
瞳ちゃんが、話しに入ってくる。
「あの~、お二人は、どうして苗字が違うんですか?」
「瞳ちゃん、それは施術と関係ないし、お客様に失礼だよ。
「だって、気になって仕方ないんです~」
とプ~とふくれる。
「先生、いいんですよ。私は婚姻はしてなかったんですけど、哲さんの姓を名乗ってます。」
「私は、おばあちゃんの姓なんです。でもこれからは、柏木 あやです。」
「彩いいのかい?」
「だって、私はお母さんとお父さんの娘なんだから、当然よ。」
お店の中は、明るい笑い声に包まれた。
二人とも、最初と違って明るい顔で、仲良く帰られた。
「先生、良かったですね!」
「ああ、瞳ちゃんのお陰だよ!」
実際、瞳ちゃんが水晶鬼を持って来てくれなかったら、父さんからの話しも無かっただろうし
おじいちゃんも現れなかっただろうし、魔獣を退けることなんて、できなかった。
瞳ちゃんのぱわーも、後押ししてくれたしね。瞳ちゃんには感謝だ。
「そういえば、水晶鬼って言うんですね。」
「うん。石に選ばれた人間のためにしかつかえなくて、鬼をも倒す力があるらしいよ。」
「今回も、助かった。」
「ふ~ん、じゃー先生にあげて良かった。」
「アタシモ、センセイヲエランデルノニナ~」
「え?なんか言った?」
「何でもないです~❤」
レイトさんは、鈍感だから 私の気持ちには気付いてないんだろうな~
そんな、不器用なトコロも、好きなんだけどな~❤
~その夜~
コン コン
「レイト、いいか?」
父さんが、入ってくる。
「父さん、どうしたの?」
「今日は、大変だったらしいな。」
「え?」
「魔獣か?」
「どうしてそれを? 父さんには話してないよね?」
「私にも、霊視はできる。 それに、集中すれば今日 誰になにがあったかもわかる。
その能力で、病院でも色んな科の部長をやっている。
父さんには、すべてお見通しか。 でも何の用だろ?
「父さん、魔獣は凄かったよ! あんな魔獣相手にしたんだから、水晶鬼さえあれば、僕もおじいちゃんに
負けないよ。」
「その 爺さんに助けられたんだろう。」
「、、、。」
「爺さんが俺の所に来た。」
「おじいちゃんが?」
「ああ、危なっかしいから、見守って欲しいと。
おじいちゃん、心配してくれてるんだな。父さん位の力があれば、おじいちゃんと話せるのかな?
僕は、まだまだって事か。
「魔獣は、何とかできても魔者が出てくるようになったら、気をつけろ!」
「人間の悪霊も、気をつけるんだ。」
父さんは、何をいってるんだ? ライオンと人間ならライオンの方が怖いにきまってる。
魔者より魔獣の方が、厄介だろう?
「その顔は、納得してないな。」
「だって、魔獣の方が怖いし、厄介でしょ?」
「魔獣には、言葉が通じない。」
「言葉くらい、あっ!?」
「わかったようだな?」
そうだ、僕は名前を聞いて、上げてやるやり方だ。人間の霊なら、言葉で説得し霊穴をつく。
魔獣には、それが通用しなかった。水晶鬼にたいしても、どうしたらいいか、わからなかった。
「それになレイト、魔獣は思ったままに行動する。獣が腹減ったから、狩りをするように。
魔者は、知恵があり、ズルがしこい 魔獣より怖い。」
僕は、自分の無知を思い知った。
「レイト、お前がやっているのは、浄霊だ 徐霊じゃない。」
「浄霊と徐霊て、どう違うの?」
「言葉を変えよう、救霊だ。お前は不幸な霊のカウンセリングをして施術をして、上げてやっている。」
「僕は、心霊施術師だからね。」
「それはそれでいいんだが、悪霊や魔の物に科しては、時には普通の霊でも、問答無用で退けなければならい
相手によっては、消しさらねばならない。無だ。上がる事もやり直す事もできない。 無だ。
水晶鬼には、それが出来る。爺さんが九字切りを教えてもらってるだろう?」
「うん。」
「お前がその気になれば、真言など唱えなくても、一刀両断もできるし、消しさる事もできる。水晶鬼がお前を
選んだのだから、もしかするとこれからそんな経験をたくさんするから、水晶鬼と巡りあったのかもな。」
うわ~、これから怖い思いするのか~。父さんは想像で話す人じゃないから、ホントなんだろうな~
「父さん、水晶鬼って、なんなの?」
「私も詳しく知ってるわけじゃないんだが。空海や安倍清明より力のある退魔師が造ったといわれているが
その退魔師が水晶鬼になったんだと思ってる、だから持ち主を選ぶ。
あの爺さんでさえ、水晶鬼に巡りあえなかった。」
「でも、どうすればいいの?おじいちゃんだって無理だったのに。」
「お前は、選ばれたんだ。水晶鬼と一体になれるようにするんだ。使いながら覚えるんだよ。爺さんも力を
貸してくれるそうだ。」
「おじいちゃんが?」
「自分を信じろ、水晶鬼を念じろ、爺さんをよべ。」
それだけ言うと、父さんは部屋を出ていった。
本当に、そんなになるんだろうか? まるで霊能者みたいだよ。でも父さんもおじいちゃんも、霊能者としての
アドバイスはしてくれてないな~。心霊施術師として行動しろという事かな?
まあ、そうそうお店には来ないだろうし、こっちから首をつっこまなければ大丈夫だろう。
この時 僕は、こっちから出向くようになるとは思ってなかった。
