連れてこられたのは暦さんの自室。窓の先はバルコニーになっている。

 バルコニーの正面は庭が全貌できるようになっていた。花火も真っ正面から眺められるて、最高立地だ。

「わぁー!花火だったんだ!綺麗だね」

「花火をやっていること、今思い出したの?」

 てっきり花火をしていることを思い出して、ここで花火を鑑賞するつもりなんだと認識していた。

「違うよ。庭に戻る前に歩くんと2人きりになりたくて」

「2人切り…僕と…」

 彼女が僕と2人だけになりたかったと言ったので、唖然とする。

 暦さんは頷き「だって、仲が良い人が増えるのは嬉しいけど、最近歩くんとあんまり話せていないんだもん。前は2人だけだったのに」と口にする。

 僕らがまだ知り合ったばかりころは2人だけの時間を過ごしていたことを覚えてくれていたことに、感動を覚えた。

 段々と負けの高鳴りが強まる。

 抑えなければと言い聞かせていたのに、花火が弾ける音に僕の思いも破裂した。

「好きだ」

 思いの丈を感情任せに打つける。

 顔を上げた僕を見上げる彼女は驚いて言葉も出なかった。

「君が好きだ。暦」

 花火に照らされた彼女は本当に美しかった。その彼女を守りたい気持ちは本心なのに、考えなしに告白した。

 彼女は何も返さず、みんなのいる庭へ戻るのだった。