彼女が殆ど作業を進めてくれたから、残りの作業は下校時間ぎりぎりで終わらせ。

 帰る方向が同じだったため、僕らは途中まで一緒に帰っている。

「手伝ってくれてありがとう」

「生徒会が校則違反を見逃がすわけにはいかないから」

「君は真面目なんだねー」

 花壇を直したことだけで、彼女印象が一転した。風無さんは自由的で、学校の規律を乱すような振る舞いをしている。だけど、人に直接的な迷惑はかけないし、他者に無関心に見えて、本当は思いやりがある。

 もう少しだけ、風無 暦という人間像を知りたくなった。なぜ、普段の素行が良くないのか?なぜ、勉強をしている様子が見えないのに、何時勉強をしていて頭が良いのか?なぜ、全く人と関わらないのに、他人を思いやれる優しい人なのか?

「じゃあ、私の家こっちだから」

 岐路にぶつかり、彼女は右の道指した。僕は左の方。ここで別れる。

「それじゃあ、バイバイ」

 ここで別れたら、風無 暦についてこれ以上のことは何も知らないかもしれない。彼女のことを知ることは医者になるメリットにも何もならないが、彼女との繋がりを作っておきたい。

 右の道を歩いていく彼女に「今度、一緒に勉強しない?」と誘う。

 龍也の意見通りに勉強を教えてもらうのはプライドが許さないが、彼女と一緒に勉強するのはいいかもしれない。

 彼女は立ち止まり僕に目を向ける。

「うーん。覚えていたらね」

 その一言で、僕らは本当に別れた。