薫希さんと僕らは別の部屋に通された。何故だろうと疑問に思っていると、いくつか浴衣を用意してくれていた。

「この中からお好きなものをお選びください」

「場所をお借りする上に、浴衣まで借りるなんて悪いですよ」

 大川さんは「せっかく用意したのですから、着てみてください」と優しく微笑む。

「今夜はお嬢様にとっても良い思い出となるように、使用人たちも尽力を尽くしたいので。これはそのための演出と思ってください」

「そうだぜ、歩。用意してくれた物を断る方が失礼なときもあるぞ」

 珍しく龍也にまともなことを言われてしまった。

 僕は甘んじて大川さんたちの受け入れることにした。

 腕を通した浴衣は上等品で触り心地がとてもいい。浴衣自体の色は紺、帯は色のシンプルなデザインのものにした。

「俺はどうだ」

 龍也のは赤に黒い龍の絵が入った目立つ柄だ。帯も龍の鱗のような模様の派手なもの。

「自分の格好を改めて見たらどうだ」

「ん?そんなにイケているか?」

 見当違いをしている龍也は放っておいて、大川さんに案内をしてもらい庭へと向かう。