ピアノの代わりにヴァイオリンを習わせることになった。本人乗り気ではなかったが、別にそれは構わなかった。きちんとやってくれさえすれば。

 ある日、妻は暦が通っていたヴァイオリン教室へ迎えに行った。無味乾燥になっていた暦を心配してのことだろう。

 2人が乗っていた車は、別の乗用車とぶつかり大惨事となった。

 その事故で妻は死に、暦は頭を強打し意識不明の重体となった。

 私は治療に全力を尽くした。有名な医者を何人も呼んだ。お金に糸目も付けなかった。妻は救ってやれなかったが、娘だけでも生きてほしかった。