「今日の風無さんの武勇伝、見たかったな。間近で見てどうだった」

 休み時間の騒動が終息した後、授業が始まるギリギリで教室に入った龍也は、その出来事を他の人より遅れて知った。そして、お昼休み時間を狙って僕にその場の情況を質問してきた。

「お前はその場にいなかったから、楽観視しているんだろうけど、実際に見た僕は生きた心地がしなかったよ」

 実際、龍也が教室に戻って声をかけてくれるまで、頭がフリーズしていた。

「だいたい、僕以外でもこの話は聞けるはず。お昼休みの時間まで待って、僕に聞きにくる必要はないのに、何で僕に聞くんだ」

「だって、他のやつらもよっぽどおっかなかったのか、あまり話したがらないし、俺の親友はお前だろ?」

「そ、それとこれとは話が違う」

「照れてんのか?」

「照れてない」

 照れているわけではないが、勉強しか能になくてつまんない僕の親友でいてくれる龍也には、感謝している。幼馴染で幼稚園児のころからお互いのことを知ってるから、気兼ねなく話せる。

「話し変えるけど、やっぱり風無さんに勉強教えてもらったら」

「ますます、抵抗感が湧いたよ。あの不良の3年生に、あんなことをした人に易々と『勉強教えてください』って言えるほど、僕はメンタル強くはない」

 思い出しただけでも頭痛がしてくる。

「まぁまぁ、そう青い顔しなさんなって。それに、1年の女の子を助けようとして、そうなった話なんだろ。根が良い子ってことじゃん」

 確かに、よくよく考えるとそうなのかも知れないが、「だからって、普通あのおっかない先輩にヘアスプレーなんかかかて、後からどんな仕返しがくるかわからないじゃないか。そもそも、ヘアスプレーを持ってくること自体校則違反」

「じゃあ何で、そのとき没収しなかったの?生徒会だろ?」

「だから、あの騒動の後、しばらく動けなかったんだよ!」

 そんな会話を続けている内に、お昼休みは終わった。