「明日の準備できてんのか〜」

「僕よりお前はどうなの?」

「おう!3日前に終わらせたぞ!」

「3日前って、勉強もそれぐらい余裕をもってやってくれたら苦労ないのに」

 僕の皮肉に「勉強と遊びは違うだろ」と開き直る龍也。

「今回は歩の方が楽しみなんじゃないの?暦ちゃんと海デートだぞ」

「⁉︎」

 明日、龍也と暦さんと3人で海へ海水浴に行く。その最終確認を龍也と電話でしていた。

「デ、デートってお前もいるだろ」

「細かいことは気にするな?ちゃんと2人きりにさせてやるから」

 2人きり⁉︎無理だ。以前は2人でいることの方が多かったのに、自分の感情に自覚をしてから側に誰かがいないととまともに話せない。

「それとも、俺と暦ちゃんが2人きりになってもいいの?」

 僕の心情を察知して、わざと挑発する言葉を発する。

「じょーだん。じょーだん。それはそうと、本当にいいのかな?暦ちゃんっちの車に乗せてもらって」

「大丈夫だって。寧ろ暦さんに何かあったら困るから、移動するなら車だし。僕らもついでにいいって」

 夏休みに入る前、暦さんの家に行ったとき海水浴のことを大川さんに伝えた。

 そのことは事前に彼女を監視しているSPから聞いていたみたいで、既に色々準備がされていた。

 暦さんが海水浴のことを忘れないように予定などの管理をしてくれていた上に、何かあったときのために僕と連絡先を交換した。暦さんとは未だ連絡先を交換していなかったから助かる。

「金持ちの車ってどんなのだろ?」

「リムジンだったよ」

「うっひょー!テンション上がる!」

 僕は乗るたびに恐縮しきりなのに、呑気なやつめ。

「それじゃあ、また明日」

「うん。じゃあな」

 電話を終えると胸の鼓動を意識する。

 僕も何だかんだ言って、楽しみにしているんだな。

 連絡は大川さんとしているから、夏休み以来暦さんとは話していない。

 久しぶり彼女に会えることに、緊張より喜びを感じている。