どうにかして龍也のテストはギリギリだが、赤点を免れた。

 僕の方は前回と変わらず2位で、点数も大差ない。

 風無さんと勉強をしていたお陰で、龍也に時間を取られた分のカバーができた。

「なあなあ、夏休みどっか遊びに行かね?」

 赤点を回避できた龍也は有頂天で僕を誘う。

「遊ぶとしても費用は全部お前もちな」

「なんでだよ?」

「勉強教えてやったでしょ?」

「まあ、姉ちゃんに没収されなくなったからな。それに比べたら全然ましだし、いいぞ!それに最近、歩とあんま遊べてないから楽しみなんだ」

 龍也は浮かれ声で「さーて。どこに行こうか?山か?海か?」と夏休みの計画を立てる。

「海?綺麗だよね」

 『綺麗だよね』と発した声そのものが綺麗だと感じた。

 発信源は風無さんだ。彼女は僕らの横へ来て、「私も行きたいなー」と呟く。

「だったら、風無さんも俺らと一緒に遊び行かない?」

「えっ!!いいの!!」

「もち!!」

「やったー!」

 僕抜きで勝手に話が進められる。

「ちょっと待った!」

 珍しく声を張った僕に、龍也は目を見開く。

「どうしたんだよ?急にそんな大声で?」

 怪訝な表情で尋ねられたが、それに答えず龍也を連れて一度その場を離れる。

「風無さん。ちょっとだけ席外すね」