今日から放課後は龍也の家で勉強を見ることとなった。

 しばらく風無さんの家には行けそうにないな。

「じゃあ、校門で待ってるからな~」

 先に帰る支度を済ませた龍也は僕を置いてさっさと校門に向かった。

 全く。誰のために貴重な時間を使うのかわかっているのか?

「あの子と約束でもあるの?」

 お気軽な親友に不満を抱いていると風無さんが声をかけた。

 そういえば、風無さんにテストが終わるまで家には行けないことを言った方がいいかな。

「うん。あいつに勉強を教えなくちゃいけないから、しばらく遊びには行けない」

「ふーん」

 風無さんは龍也に興味を持ったのか「ねえ、あの子は君の親友なの?」と尋ねた。

 僕が肯定すると「なんて名前?」と更に問うてくる。

 龍也のことを知りたがる風無さんを不満に思いながら「神崎(かんざき) 龍也」と答えた。

「こんな漢字?」

 彼女のノートには『神埼 竜弥』と書かれていた。間違っているが、訂正することすら癪に障る。

 僕は頷き、彼女はそれが龍也の名前だと信じた。

「なんで龍也のこと知りたがるの?」

 無意識に口から出していた。どうやら僕は風間さんが龍也に興味を持つ始めていることに相当な焦燥感に苛まれいる。

「んー…」

 彼女は理由を忘れたようで、思い出そうと頭を悩ませた。

「そうだなー…歩くんの友達だから、知りたくなったのかな?」

 僕の友達だから…

 複雑な心境だ。興味を持った理由が僕だったなんて考えもつかなくて心が騒つく。嬉しいのか恥ずかしいのか判断がつかない。

 それに、龍也に興味を持つことに対して不満なことには変わりなかった。

「まあ、この答えもあっているかどうかわからないし。またすぐに忘れちゃうだろうけど」

 できることなら、龍也のことは忘れてほしい。だけど、知りたくなった理由が僕だったってことは忘れないでほしい。

 複雑で意味不明な難題の扱いに自分自身困惑する。