「なぁ、なぁ。お前、最近風無さんと仲良いよな」

 風無さんの家に訪ねてから、僕らはたまにだが話すようになった。

 記憶障害者の彼女は翌日にはあの日のやりとりを忘れていたようだが、僕が話しかけたらノートを開き思い出したようにしゃべりだす。

「まぁ、友達だから」

「いいなー、俺にも紹介してくれよ」

「お前みたいなバカを紹介できるわけないだろ。同類と思われたくないからな」

「ひでー、言い草」

 むやみやたらと彼女のことを話すのは良くないと思う。

 彼女自身はなんとも思っていなさそうだが、風無家の名前に傷が付くことを恐れている。彼女の保護者からしてみれば大勢の人に娘が障害者だと知られるのは避けたいはずだ。