彼をちらりと盗み見る。
さっき向かい合って立っていた時に
少し見上げなくちゃいけなかったから
背は高いんだなと思う。
つり眉とたれ目が、覇気のなさを感じさせる。
ページを捲る手に視線を移した。
細くて長い指がつぅ、と紙と紙の間を這う。
興味がなくてあまり顔を確認していなかったけれど、
この人、わりとかっこいいのかも。
彼の座る椅子の横にもう一つ椅子があって、
そこにカバンを置いていた。
カバンにチェーンがかかっていて、
定期券がぶら下がっていた。
定期券って使ったことはないけれど、
下の方に名前が書いてあることを思い出して、
そう言えばこの人の名前も知らないなと思って
そっと確認しようと目を凝らした。
名前はなかなか見えない。
ゆっくり顔を近づけて必死になって集中する。
あっ、見えそう……ええと、見えたけど、
この漢字……なんて読むの?


