「この化け物を心配!?」

義彦が笑い始めると、その笑いは全員に広がっていく。星夜はそれを怒りのこもった目で見ていた。そして低い声で言う。

「お前たちと蘭ちゃんを一緒に置いておけない!だから俺はアメリカに蘭ちゃんを連れて行く!俺も蘭ちゃんも三国家にはもう関わらない!!」

そんな化け物くれてやる、そんなことを言いながら三国家の人たちは笑う。星夜は怒りをその目に浮かべたまま、蘭を連れて葬儀場を出て行く。

蘭は、星夜の腕の中でワンピースの胸元を掴んでいた。この気持ちが何か知りたくてたまらない。しかし、それを聞くことはできない。

「タクシーに乗るよ。俺の泊まるホテルへ行こう」

星夜に優しく言われ、蘭は「はい」と頷く。タクシーで二十分ほど揺られると、蘭の目の前に小さなホテルが見えた。

「小さいけど、できたばかりのいいホテルなんだよ」

星夜がそう言い、先にタクシーを降りる。ホテルなど泊まったことなどない。蘭は星夜の隣に並び、歩いた。