駆流と藍子は約束はきっちり守る人だ。お昼に迎えに来ると言っていたのに来ないなど何かあったに違いない。蘭の心臓が嫌な音を立て、足は自然と早くなっていく。

「お父さん！お母さん！」

家のドアを開けた刹那、蘭は手で鼻を覆った。嗅いだことのない異臭が奥から漂ってくる。蘭の顔は無表情ではなく恐怖が浮かび上がっていく。ゆっくりと靴を脱ぎ、蘭は臭いが強くする方へと向かった。

リビングのドアを開けた刹那、蘭は言葉を失い、その場に崩れ落ちる。小さな体は小刻みに震え、目は大きく見開かれていた。

朝、二人とリビングで朝ご飯を食べた。一緒に話したり、テレビを見て、話をすることもあった。そんな幸せで温かな思い出ばかりのこの場所に、冷たく暗いものが襲いかかって全てを奪っている。

リビングには、変わり果てた駆流と藍子の姿があった。二人は全身を鋭利な刃物で滅多刺しにされていて、リビングの床には血の海ができ、壁のあちこちにも二人の血が飛び散っていた。