蘭は手に取った本を元の場所に戻し、医学に関する資料や本が並ぶコーナーへ向かう。七月の午前中にそんなコーナーに行く人などおらず、そのコーナーは他のコーナーとは違って静かだった。

蘭は医学の資料を読み始める。難しい単語の意味は調べ、ページをめくっていく。児童書よりも医学書の方が蘭にとっては面白いものだった。

蘭が何冊目かわからない医学書を手に取った時、ふと顔を上げると壁にかけられた時計が目に映る。もう十一時を過ぎていた。

「本を選ばないと……」

蘭は医学書を棚に戻し、児童書コーナーへと戻る。そして悩んだ結果、シャーロック・ホームズを借りることにした。早速本を手にし、カウンターへと向かう。

本を借りた蘭はすぐに図書館の入り口へと立った。もう十二時頃で駆流が迎えに来てくれるはずだ。しかし、駆流はなかなかやって来ない。

蘭は時計を見ながら駆流を待ち続ける。しかし、お昼の一時を過ぎても駆流が来ないため、蘭はいけないことだと思いながらも一人で家に帰ることにした。