あなたの左手、 私の右手。

「あほ」
先輩はそう言って私の体をグイっと引っ張り自分の背中に乗せる。
「行こう」
先輩は私をおんぶしながら階段をすたすたと降り始めた。

ここはホテルの8階。
しかも階段は宿泊客でごった返している。

「降ります・・・」
そう言っても先輩は有無をいわさず足をとめない。

「先輩」
「ん?どうした」
少し振り返り私を気にかけてくれる先輩の背中はどこまでも大きくて、どこまでも優しい。
「ごめんなさい・・・」
「あほ。こんくらいで恐縮すんな。つかまってろよ」
「・・・はい」
先輩は力強く私をおんぶしたまま階段を一階まで降りきった。