「今日は忙しくなるぞ。覚悟しろ。」
「・・・はい。」

どきどきしている心臓の音が先輩に届いてしまうのではないかと不安になりながら、私は先輩の力強い腕につかまり、【ASAKAWA】のある駅に早く着くことを願った。

ちらりと同じ電車に乗っている女性たちと目があった。

周囲の人よりも少し背の高い先輩の方を見ている。

客観的に見て先輩はかっこいい。
笑う顔なんて無邪気で母性本能くすぐるタイプだ。

女性が目を惹かれる気持ちもわかる。

私だって現にどきどきしてしまっている。

でも先輩はあくまで仕事の先輩だ。
まだ出会ったばかりで性格だってよく知らない。もしかしたら彼女だっているかもしれないし。
相手をよく知らないままにこれ以上の感情を抱くことはないと思いながら、私は先輩をみる女性たちから目をそらして、窓の外に視線を向けた。