「ありがとうございます」
今度は、先輩の方が見られなかった。

力強い先輩の腕につかまりながら、うつむきがちに言う私。

そんな私の頭をもう片方の手でポンポンと撫でながら先輩は笑った。
「ほんとちっさいなお前」と。

「先輩が大きすぎるんですよ」
小さな声で言い返すと先輩はさらに笑いながら、私の髪をくしゃくしゃにする。

「言い返すなんていい度胸してんな。」
「・・・」
「そのくらいじゃないと、俺とペアは組めへんな。ええことや。」
「先輩、関西弁なんですね」
「あー。仕事では使わないように気をつけてるけどな。」

仕事場では先輩はあくまで標準語だ。独特な言い回しも地方ならではのイントネーションの違いも感じない。
でも、昨日も今日も、駅やエレベーターでは関西弁だった。