先輩に寄りかからないように私は自分の足にふんばって、電車の揺れに負けないように集中した。

それでも揺れに逆らえず少し足元が少し動いてしまう。

先輩の足を踏まないようにしないと。

そんなことを考えていると「つかんでいいぞ」と先輩が私の方を見た。
私のすぐ横に伸ばされている先輩の腕。
私の背中側にある壁に手をついて、私がつぶれないように、私の体に触れないようにしてくれている。
「大丈夫でいっ」
”大丈夫です”と言いかけた私。でも電車がその時大きく揺れて、結局先輩の腕に寄りかかってしまう体制になった。

「大丈夫でいって・・・お前っ・・・江戸っ子か・・・ウケる・・・」
焦って先輩を見ると、先輩は顔を真っ赤にして笑っていた。ククっと声さえ漏らして笑う先輩に、少しだけ私の緊張はほぐれた。

「ほら、危ないからつかまっとき。」
先輩は結局私の手をつかみ自分の腕につかまらせた。