「行くぞ」
「はい」
冷静さを取り戻せた私は先輩の言おうとしていることが、すぐにわかる。
いつものように、呼吸が合った私たちは、イベントフロアに残っていたお客様を、企画展をしていたフロアの中央にスペースを作りそこに誘導をした。
イベントで使用するためのパーテーションを動かしてエレベーターまでの目隠しにする。

同時に私は1階フロアに連絡を入れて、これから搬送があることを報告した。
先輩は管理部に連絡を入れて、45階のフロアの状況を報告している。

報告が終わると私たちは企画執行部のフロアに戻り、少しでも搬送がしやすいように机や棚を二人でかき分けて通路を作った。

「通ります」
その声に、顔を上げると、担架と救急隊員がフロアに入ってきた。

私も先輩もその光景に息を飲む。