あなたの左手、 私の右手。

「これ!」
開けた瞬間、その箱の中身が分かった私はきっと先輩に負けないくらいの瞳の輝きで先輩をみた。

「食べたがってたやろ?ここのカステラケーキ」
そう言って先輩が私がまだ紙袋から出しきれていない箱に手を伸ばす。
「大阪に出張した時、食べてみたいって言っとったけど、行けなかったからな。取り寄せた」
「えー!すごーい!」

これは大阪に出張した最終日に先輩に私が行こうと誘ったケーキ屋さんのカステラケーキだった。
一口サイズのものから、かなり大きなサイズのものもあるこのケーキ屋さん。
カステラにクリームが挟まれているケーキは果物が挟まれている。

『このカステラのしっとり感と、バタークリームが絶妙らしくて食べてみたいんです!』

「覚えてたんですね」
「当たり前やろ。本当は今度一緒に行った時に必ず行こうっておもっとったんやけどな、予定変更。これにかぶりつく美羽をみたくなった。」
先輩は仕事から離れると私に関西弁で話すように、私のことを赤名ではなく美羽と呼ぶようになった。

まだ、本当はくすぐったくて、名前を呼ばれるたびにどきどきしている。