あなたの左手、 私の右手。

「今夜は引っ越し記念で、おいしいもの食べに行こうな。」
「はいっ!」
先輩に手を引かれながら私は車に乗り込む。

徐々に体力も体調も回復して、元の通りまでは戻っていなくても食事もとれるようになっていた。

仕事に復帰してからも先輩はこの一週間、毎日私の家に一緒に帰宅して、この家から出勤してくれていた。仕事からの帰り道に、何かおいしいものをテイクアウトしたり、一緒にキッチンに立つことに、どきどきもワクワクも感じたのはまだ先輩には内緒だ。

車の後部座席に私の荷物を積み込んだ先輩は運転席に乗ってすぐに私の膝に紙袋を置いた。

「それ、引っ越し祝い。」
「え?」
予期していなかったことに、私が戸惑っていると、ものすごく無邪気な笑顔ときらきらの瞳を私に向けて「早く開けて」とせがんでくる。
まるで子供のようだと、思わず吹き出して笑いながら私は箱を開けた。