そして翌日からの仕事復帰を前に、週末の夜、私は先輩と食卓を囲みながら話をはじめた。
「先輩」
「ん?」
「いろいろと支えてくださってありがとうございました。」
改まる私に、先輩は持っていた箸を置いた。

今夜はお礼も兼ねて、先輩が好きそうな料理をたくさん作って机に並べた。
先輩は今日までの私の休みを知っているからこそ、ゆっくりしてろと言ったのにと少し険しい顔をしてから、「でも手料理ってうれしいな」と無邪気に笑ってくれた。

そんな食事の最中に話始める私に、先輩はまっすぐ視線を送ってくれる。

「私、ここを出ようと思います。」
「え?」
「やっぱり、この家に一人は寂しいし、思い出がたくさんある場所は大切だけど、やっぱりつらいです。」
「いいのか?それで。」
「はい」
この家には両親の想いでも詰まっている。でも、今はつらいだけだ。この家には両親とおばあちゃんとの思い出がありすぎて、一人を感じて孤独を膨らませる。