「両親が亡くなった時、何もかもを手放して、おばあちゃんは私の所に来てくれました。おじいちゃんとの思い出の家も、勝手に売っちゃったんです。」
「・・・そうか」
「子供のころから私はおばあちゃんが大好きで。」
「うん」
「気丈な人で弱音なんてはかなくて、いつだって笑っていて。どんなことがあっても”大丈夫大丈夫”って・・いつだって・・・」
「うん」
少しだけ彼女の声が震えだしたことに気づき、俺は彼女の背中をさする。

「唯一、おばあちゃんが泣いているのを見た時があります。」
「・・・赤名の両親が亡くなった時?」
俺の言葉に赤名は首を横に振る。

「おじいちゃんが亡くなって少ししてから、おばあちゃんはおこわ作りながら台所で泣いてたんです。生きてるうちに食べさせてあげたかったって。」
「・・・」