あなたの左手、 私の右手。

彼女は泣かなかった。
我慢しているわけではなさそうだ。

やっとの思いで彼女の体をはなしたとき、彼女はあまりに悲しそうに微笑んだ。

「まだ実感がわかないんです。」
その言葉は彼女の本心なのだろうと思う。

あまりに衝撃の強すぎることに、彼女の心が現実を認めることを拒否しているようにも見える。

俺はせつなく微笑みながら涙すら流せない彼女をもう一度抱きしめた。


「一緒にいる。そばにいるから、おばあちゃんのことちゃんとおくろう。安心して逝けるように。」
こんな言葉しか言えないのかと自分に嫌気がさすくらい、滑稽なありきたりな言葉しか言えない。
想像していたよりも彼女が憔悴していて、あまりに切なく見えて、俺は正直動揺していた。

俺はどう支えられるか、自問自答した。