「あー似合ってる似合ってる」
玄関まで来たおばあちゃんは私のスーツをしわしわの手で撫でる。

「ありがとうね。スーツ。」
このスーツはおばあちゃんが買ってくれたスーツだ。
「いいんだよ。それ着て頑張っておいで。美羽は自慢の孫だよー。あの【ASAKAWA】で働くなんて。すごいことだ。」
「ありがとう。頑張るね。じゃあ行ってきます!」
私は話が長くなりそうなおばあちゃんに笑顔を見せてから玄関を出た。

街からは少し離れた場所にあるこの家には、今おばあちゃんと私の2人暮らし。
元は私が両親と一緒に住んでいた家で、ここに2年前からおばあちゃんが一緒に暮らしてくれている。2階建ての家だけど、足の悪いおばあちゃんは2階に上がることはできない。

週に3回デイサービスに通っているおばあちゃんは今75歳。
家におばあちゃんを一人にして出勤するのは心がひけるけど、私がおばあちゃんのことも支えなくてはいけないことを考えると仕方ない。
せめてデイサービスで同年代の人とお話をしたり何かを作ったりして楽しんできてほしいと思っている。