あなたの左手、 私の右手。

次の日、私は無事に体は回復して出勤した。
おばあちゃんをデイサービスの送迎者に乗せて見送ったあと、いつものようにパンプスのかかとを鳴らしながら駅までダッシュする。

「そんなに走ると、ぶり返すぞ。」
その声に顔を上げると、スーツ姿の先輩が駅の前で立って私を待っていた。
「休めって言っても聞かんからな。お前、肺炎やって言われてるんやぞ?」
あきれたように言いながら、先輩は私の方に近づく。

「おはようございます。いろいろとありがとうございました。先輩のおかげで回復しました!」
頭を下げてお礼を言うと、私の頭にポンと手を置きながら先輩が私に顔を近付ける。

「無理はしないこと。まだ回復途中や。今日は外回りは禁止。デスクワークオンリーな。」
「はい。ご迷惑おかけします。」
「あほ。迷惑ちゃう。心配なだけや。」
至近距離に先輩の顔があることにどきどきしながら、先輩の目を見つめた。
「おはよう。赤名。」
「おはようございます。」
まるで私の存在を確認するような、今ここにいることを実感しているような先輩。