あなたの左手、 私の右手。

「黒谷君、ちゃんと冷静に仕事ができるようになってる。それに、がむしゃらすぎて見えなくなっていたものをちゃんと見ているように思う。」
「礒倉主任は私と黒谷先輩のペアにしたこと、後悔してないんですか?」
私の質問に、一瞬目を丸くしてから主任は微笑んだ。
「もちろん大成功だと思ってる。」
「私、先輩の足を引っ張って・・・」
「それは違う。」
「え?」
「ぴったりの呼吸じゃない。黒谷君はあなたを知ろうとして、あなたのペースに合わせながら、見落としてきたものにちゃんと目を向ける余裕ができてきてる。あなたも、ちゃんと黒谷君が不器用に言葉にできないことを受け止めてフォローしてる。いい関係じゃない。」
私は先輩の足を引っ張てるだけだ。

礒倉主任の言葉にも素直に喜べないのは、私が事実先輩に迷惑をかけているからだ。

「あんまりうちの赤名をいじめないでくださいよ?」
その声に顔を上げるとそこには先輩が立っていた。