あなたの左手、 私の右手。

「いいえ。ここの社員?」
「はいっ!今日から勤務します!」
つい声が大きくなっていた私に、男性はちらりとまだ一緒にエレベータに乗っているほかの人に視線を向けた。

「あっ・・ごめんなさい・・・」
思わず肩をすくめて自分の口に手をあてた私を見てその男性はふっと笑う。

整った顔は整いすぎていてよく言えば、イケメン。なかなか周りにはいない美形。
でも笑った顔は・・・なんとなく・・・大きい犬のように親しみがわくような無邪気さを感じた。

「配属の課は?」
男性に聞かれている時、45階にエレベーターが到着した。

「イベント企画執行部です。私はこの階なので、失礼します。」
深く頭を下げてから開いた扉に向かうとその男性も私と一緒に扉へ向かう。

「?」
エレベーターを降りてから後ろを振り返るとその男性も同じようにエレベーターを降りている。