あなたの左手、 私の右手。

「赤名さんもすっかり私たちの部署の戦力ね。」
「いえ。・・・そんなことは。」
礒倉主任の隣で刷りたてのパンフレットを並べながら私は先輩の方を見る。
看板をつけ終えた先輩は机を出して並べ始めていた。
「黒谷くんの過去の話、聞いたんでしょ?」
「・・・はい・・・」
「彼、かなり責任感が強いタイプだから立ち直るまでにみていられなかった。自分を仕事で追い込んで。だから彼のペースをダウンさせるために新人教育をお願いしたんだけど、前回は彼以上に体力勝負なストイックな新人をつけちゃって失敗したのよ。」
礒倉主任は手をとめて私の方を見た。

「社長の意向もあるの。あなたの採用試験の内容をしっている社長から、黒谷くんとペアを組むことを提案されて、私も適任だと思った。」
社長と聞いて、私はイベントの受付に奥さんと一緒にいた社長のことを思い出した。
朝川社長は、たとえ社長でも会社の職員のことをほとんど把握しているという。
採用試験では直接話をする機会はなくても、社長は私のことを把握していたのだとその時になってわかった。