あなたの左手、 私の右手。

礒倉主任の話を思い出した。
どうして先輩は私と先輩のペアを組ませたのか、それは今もわからないままだ。

「礒倉主任は、俺の亡くした彼女の友達や。取引相手やったって言ったやろ?俺は死んだ彼女と仕事でペアを組んどった。大学も同じやったからな。そのまま入社してペア組んで仕事してて、礒倉主任は
俺のことも彼女のことも知っとったんや。俺が仕事に全力を注いでいろんなこと忘れようとがむしゃらになるのとセーブしようっていつもいつも気遣ってくれてるんやろうな。せやから赤名と俺をペアにした。俺が少しでもペースダウンできるようにって。」
今、礒倉主任の考えが分かった。

「一緒にのむと必ず言われるんや。少しセーブしないといつか立ち止まった時に、俺が壊れるってな。赤名と一緒に組んで、ペースダウンして俺が壊れないようにって気遣いやろうな。」
「・・・」
「はじめは正直、ペースダウンすることが怖かってん。今までハイペースで進んできた分、ゆっくりにすることに不安しかなかった。でも、久しぶりにゆっくり歩いたら、今まで見えなくなってた景色が次々に視界に入ってきて、むしろがむしゃらな時よりも仕事がうまくいってる気がする。」
いつも先輩は私が歩くペースに合わせて歩いてくれている。
横を歩いてくれている。
その気遣いの意味も、私は初めて知った。