あなたの左手、 私の右手。

しばらく先輩は私の肩を抱いて、優しくさすってくれた。

「すみません・・・」
落ち着いてから急に恥ずかしくなって私がうつむくと先輩は「俺も話さないとな」と話始めた。

「俺、大阪に勤務してる時があってな。その時に付き合ってた人がおったんや。このまま結婚するかもしれんなって思ってた。でも、彼女にとっては違ったみたいでな、ほかにいたんや。」
「・・・」
「恥ずかしいやろ？こんな話。」
「恥ずかしくはないです。」
「仕事にばっかり夢中になってた俺のせいやって思う。彼女のこと大切にしきれなかった。男には仕事を優先しないといかん時があるんや。っていうのは言い訳だ。」
先輩は少し恥ずかしそうにうつむく。
「その彼女が亡くなった。俺の元を離れてすぐに、俺じゃない相手と。事故で。」

先輩の背負っているものの大きさに私は初めて触れた。