私は彼とあくまでも友達になりたい

side 中野千夏

「…みーちゃった。」

私が、梨花を見送った後、司書の先生である小野寺先生が扉の影から出てきた。

「知ってましたよ。見てたの。」

私はそう告げる。

「ありゃ、バレちゃってたか。」

小野寺先生は頭をかきながらそう言った。

「…ねえ。違ったらごめんなさいなんだけど、あなたも弥生くんのこと好きだったりする?」

小野寺先生はニコニコして私に言った。

「…どうしてそう思うんですか?」

私は冷たく言う。

「どうしてって…。ただの勘、よ。」

やはりニコニコしている小野寺先生。

「…まあ、100歩譲ってそうだとしましょう。
でもいいんです。私。
大好きな親友と、大好きだった彼が付き合う。
これ以上の幸せ、ないでしょう?」

声にトゲがあっただろうが気にしないし、気にするつもりもない。
そんな私の言葉に、小野寺先生は、

「ふぅん、あとさ、さっきのそのここなさん?が告白云々の話も嘘じゃない?」

と、またニコニコしながら言った。

「…どうしてそう思うんですか?」

私はまた疑問に疑問を返した。

「だから、勘、よ。」

私は、一筋の涙を流しながら、小野寺先生の笑顔を眺めていた。

私にも泣く権利は無かった。
だって、私は恋を諦めただけで、失恋したわけじゃないから。

ごめんね。梨花。

梨花にはああやって言ったけど、意気地なしは私だったんだよ。