***

side 花園ここな

私は、マンションの下で彰人のことを待っていた。

今日がバレンタインだから。

毎年毎年、彰人にはチョコをあげていた。
今年は、梨花がいるからあげようかどうしようか迷ったが、今年のはけじめをつける一回だと思うことにした。

ま、あげられなくてもいいんだけど。

彰人が幸せならば、それでいい。

「…花園?」

その声はよく知っている。でも、君にその名前で呼ばれたのはいつぶりだかわからない。
…もう、ここなとは呼んでくれる日は来ないだろう。

「彰人、お帰り。」

この言葉もいつまでかけられるだろうか。

「どうしたの?」彰人が聞く。
だから、私は手に持つチョコを突きつけて、

「はい、チョコ。これで私からあげるのは最後だからね。…梨花とお幸せに。」

私は精一杯の笑顔で言った。