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side 福井春樹

「なぁ、ちょっといいか?」

俺はそんな言葉で呼び出した。

誰を、どこに。

「──で、俺に用って何?」

弥生彰人を、校舎裏に、だ。

「俺はお前が何したのか知らないけど…。」

そこまで言い、弥生を壁に押し付ける。

「西窪のこと困らせてるのは知ってる。
俺はあの日の勝負に負けて、身を引いたけど、あいつのことがまだ好きだ!!

でも、俺がどんなに西窪を慰めようと、あいつはなびかないんだよ。
なぁ、弥生。もうこんなこと言いたくないが、西窪を泣かせるくらいなら、別れろ。」

俺は息切れしながら、弥生を睨む。

弥生は俺の思う反応とは違っていて、顔面蒼白になり、

「あいつあのこと知ってたのかよ…。」

と呟いた。そして、自分のスマホを急いで見たあと、

「悪りぃな、福井。俺するべきこと決まった。」

と言い、どこかへ行ってしまった。

…どうやら、俺はあいつに助け舟を出してしまったらしい。
でも、もういいんだ。

西窪のことを本気で幸せにできるのは、あいつしかいないと薄々気づき始めていたから。