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電車に揺られて、20分。
目的地の遊園地に着いた。
その遊園地はお姫様の出てくる昔話がモチーフになっている。大人も子供も楽しめる設計のため、休日は老若男女問わず賑わっている。
私も子供の頃からよく遊びに行った。

電車の中で彰人くんも子供の頃よく行ったと言っていた。

人は多いが、日曜日にしては少ない方だと思う。

「ねぇ、彰人くん。何から乗る?」

私は彰人くんに聞いた。

「そうだなぁ…。」

彰人くんは言った。
彰人くんには悩むとき、あごに手を当てる癖があるようだ。

「梨花と一緒ならどこでも楽しいよ…って思ってるし、言いたいところだけど、俺さ、今日どう回るか色々考えてきたんだよね。
ねぇ、今日は俺に任せてくれない?…」

彰人くんはそこまで言い、私の右耳に、

「…お姫様?」

と囁いた。
私は照れながらも、喜んで、と言った。