「この話は長濱中出身ならみんな知ってる。だから、長濱中出身が少ないこの高校を選んだわけだったんだけど…。

…まぁ、そんな話は置いといて。
俺には親友がいた。そいつは吉本颯太(よしもとそうた)って言うんだけど、中学のときバレーで一緒だったんだ。

それで中二の夏くらいに、颯太に彼女ができた。
俺は、心の底から祝福した。

でも、ある日、颯太の彼女に言われたんだ。
付き合ってくれないか、って。
だから、お前、颯太と付き合ってるだろ?って言ったんだけど、そいつ、俺目当てで颯太に近づいたらしくて…。
その頃の俺はバッサリ告白を断るのが苦手で、曖昧にのらりくらりと返してた。そいつはそれに痺れを切らしたのか、俺に無理矢理キスしたんだよ。それで、本気だから、と吐き捨てた。
…反吐が出るよな。

で、そのところをたまたま颯太に見られた。

それが仲違いの原因になった。
それ以来口も聞いてくれなくなった。
颯太と仲が良かったやつは、俺が颯太から彼女をとった悪いやつってことになってる。

その上、どこのどいつが流したのか知らない噂まで流れた。
『弥生彰人を好きになったやつは、必ず一度以上涙を流すことになる。その上、弥生彰人のことを好きな女子を好きになると、必ず結ばれることはない。』ってな。
まぁ、信じない奴がほとんどだったけど…。

クラスメイトに無気力に接してたのも、そういうことがあったから親しい友達を作るのが怖くなったっていうか…。
梨花には、なんでだか、そういう気持ちが湧かなかったけど…。

…この話を言ったら梨花が離れていくんじゃないかな、って思ってた。
俺にも非はいっぱいあるから。

でも、言わないとな、って思う出来事がこの間あって…。それで今日会おうって決めたんだ。」