私は彼とあくまでも友達になりたい

「俺とお前は勝負する。で、俺が勝ったら、お前らは別れてくれ。お前が勝ったら、俺は『お前との恋愛を応援する西窪の友達』あたりにでもなる。」

福井くんは今まで見たことないような意地悪な顔で言った。
そんな福井くんに彰人くんは

「パス。俺にデメリットが多すぎるだろ。」

と言った。
その通りだ。もう私たちは付き合ってる。その勝負に乗って負けるくらいなら、パスした方が賢い判断だ。

「…ちなみに、俺はもう西窪からこの勝負の了承を得ている。私を賭けて勝負していい、ってな。多分、お前が勝ってくれるって思ってるんだろうな。」

私は驚きのあまり、声が出なかった。
そんな了承してない。待ってと言おうとしたが、ここで私が出ると気まずい空気になることが察せられた。
福井くんは言葉を続ける。

「ここでお前が逃げたら、カッコ悪いよな。
…それに、俺、お前と同じ中学校だったから、"あの話"知ってるんだ。
お前がこの勝負に乗らないんなら、西窪にバラしちゃおうかな。」

なんだろう、"あの話"って。
私の知らない彰人くんがいるのかな。
そんな私をほっぽって、彰人くんと福井くんの話は進む。

「…わかったよ。西窪に対して本気なのも、俺のことが嫌いなのも。
その勝負乗る。ま、俺も負けるつもりないし。」

彰人くんは笑って言っていた。その顔は私に向ける意地悪な笑顔とはまた違う意地悪な笑顔だった。