上原さんと 一緒の時間は いつも 穏やかで。
” ゆっくりでいい ” って 言葉 そのままに
上原さんは 私に 何も 無理強いしないで。
自然と 私の中で 上原さんの 存在は 大きくなっていた。
でも あまりに 自然過ぎて…
タケルに感じた 胸が高鳴るような 思いを 抱けなくて。
これでいいのか 私の不安は なかなか 消えない。
「実際 あず美は どっちが好きなのよ?」
夏休みを 控えて いつもの4人で 食事をしながら。
私が 上原さんのことを 話すと 美香は言った。
「好きって… タケルのことは 今は もう 好きじゃないわ。」
「でも 上原さんのことも それほど 好きじゃないってこと?」
「多分 好きだと思う… うん。 好きだよ。」
「何よ はっきりしないなぁ!」
歯切れの悪い 私を 芙由子が 責める。
「昔 タケルと 付き合った時みたいに 上原さんに 夢中になってる わけじゃないから…」
「だって。そんなの 当たり前じゃない? タケル君と 付き合った頃って 大学生の時でしょう? 若さだって 違うし。色々 経験して 大人になっているんだもん。学生の頃の ” 恋人が全て ” みたいな恋愛 できるわけ ないじゃない?」
さくらが 諭すように ゆっくり言うと
みんなが 大きく 頷いた。
「みんな そうなの?」
恋愛音痴の私は ただ年を 重ねただけで。
何も 経験しないまま 大人になっていたから。
「そうよ。打算とか計算とか。ただ 好きってだけで 突き進むのなんて 学生の頃だけだよ。」
「これから 付き合うと 結婚だって 意識するし。いくら 好きでも 生活力のない人は 駄目とか、ね。」
美香と 芙由子は 頷き合って 言う。
「そうなの…? 上原さんって すごく穏やかで。自然なまま 一緒にいられるし。でも これでいいのか 不安もあって。」
「好き、好き、好き。会いたい、会いたい、会いたい。って?あず美は まだ そういう恋愛を したいの?」
「そうじゃないけど。好きになったら そうなるのかって 思っていたから…」
「そんなの 疲れちゃうじゃない?仕事だってあるし。生活しなくちゃ いけないのよ?」
「そうよね。そういう意味では 上原さんは 合っていると思う。一緒にいて 疲れないし。すごく しっくりきて。寛げるから…」
私が 遠慮勝ちに 言うと 3人は 驚いた顔をする。
「えー。すごいじゃん。そういう人 なかなか いないよ?」
「うん。何も 迷うこと ないじゃない!」
「きっと もう二度と 出会えないよ そんな人。」
みんなの 言う通りだって わかるけど。
” 諦めない ” って 言った通り
まだ 電話してくる タケルに
ドキドキ している私は おかしいのかな。



