金曜の夜 芙由子と2人で 食事をして。


「で?その後 タケル君とは どうなった?」

「どうもなってないよ。相変わらず 電話は来るけど。」


営業課の美香と 広報課のさくらは

残業が多くて 中々 予定が 合わないけど。


経理課の芙由子は 私と同じように

だいたい 定時で帰れるから。


私達は 時々 2人で ご飯を食べた。


「案外 電話 待ってるでしょう?あず美。」

「えっ…そうだね…正直に言うと そうかも。」


「もう一度 会ってみればいいじゃん?」

「うーん。その決断も できないんだよね…」

「あず美って そんなに 愚図だったっけ?」

「ちょっと。愚図とか 言わないでよ!」

「フフッ。でも 愚図じゃん?どう見ても…」



「これでも 結構 悩んでるんだから。」

「何を そんなに 悩むことがある?」

「私 タケルと別れた時 すごく傷付いて。辛かったの。もう あんな思いは したくないし。」



「へぇ…あず美 相当 好きだったんだね?タケル君のこと。」

「うん。すごく好きだったと思う。付き合った人の中で 一番 好きだったかも。」



「ねぇ。別れた時って どんな感じだったの?」

「突然 雅代さんに 待ち伏せされたの。大学の前で。」

「それで?」



「その時は 3人で カフェに行って… 」

「3人で 話したの?」

「うん。雅代さんが タケルに ” どっち選ぶの? ” みたいなこと 言って。タケルは 選べないって 言ったんだよね。確か…」


「雅代って メンタル強いね。」

「うん。私 何がなんだか わかんなくて。動転してて よく覚えてないけど。」

「それで あず美は ” じゃ 別れます ” って 言ったの?」


「ううん。その場では 何も言えなくて。その後 タケルと2人で 話したの。雅代さんのことも なんだか わからなかったし。」

「結局 タケル君と雅代って どういう関係なわけ?」

「中学と高校が 同じで。高校生の時に 付き合ってたらしい。でも 別々の大学に入って。お互いに 違う人と 付き合ったりしてたみたいで…」


「タケル君 あず美と 付き合いながら 雅代とも 会っていたの?」

「うん。何回か 会ったけど。タケル的には 付き合っているつもりは なかったって言うの。ただ 雅代さんは そう思ってなくて。また タケルは 自分の所に 戻ったって 思っていたんじゃないかな。」


「同じ中学って ほとんど 幼馴染み みたいなもんじゃない?家も 近所だったり。一緒に 成長した感じじゃない?複雑だよねぇ…」

「タケルは 地元の付き合いも あるから。ゆっくり 雅代さんを 納得させるって 言ったんだよね… でも 私 そういうの 許せなくて。だって おかしいでしょ?私と 付き合うつもりなら 雅代さんにも そう言えばいいじゃん?はっきり。もう タケルのこと 信じられなくて。」


「それで あず美から 別れたんだ。」

「そう。私 そんなの 耐えられないからって。私一人を 選べないなら もう 続けられないって言ったの。」

「タケル君は 納得したの?」

「したよ。" じゃ 仕方ないな ” って言って。それっきり お互いに 連絡も 取らなかったし。卒業まで 大学でも なるべく 会わないように 気を使って。」


私の言葉に 芙由子は 微妙な表情で 頷いた。


「それ タケル君は 意地になっていただけで。いずれ あず美は 戻って来るって 思っていたんじゃない?雅代みたいに…」


「はぁ?私は 雅代さんとは 違うのに…?」