翌朝、彰くんが玄関を出るのをベッドの中で待つ。

「彰くん、いってらっしゃい」彰くんに聞こえないように囁いた。涙が溢れる。

 出勤したのを確認してから起き上がった。

荷物は最低限にまとめる。その間に洗濯機をまわして洗濯物を脱衣所に干す。
 その間も涙はなかなか止まらなかった。

実家へ電話を掛け、これから一人で行く事を伝えた。

電車に揺られながら彰くんのケータイへ連絡する。

《お疲れ様 今、私は実家へ向かってます。勝手にごめんなさい。会社は一週間休みを取りました。実家でゆっくりして来ます 》

16時に実家についた。駅まで迎えに来てくれて両親は突然の帰省にも関わらず喜んでいてくれたが、流産したことを話した。

「流産したの 赤ちゃんの心臓が動かなくて…3ヶ月に入ったところだった」また涙が溢れる。

「七海 辛いね、頑張ったね、休もうか お風呂入る?」

「うん、お風呂入ろうかな」

「何か食べたいものある?」

「おかゆとかうどんがいい、でも少ししか食べれないの」

「わかったわ、少しでもいいから食べなさい」

「病院には彰くんのお義母さんに付き添ってもらったの」

「そう、じゃあこちらからもお礼の連絡入れておくわね」

 お母さんは泣きながら労ってくれる。
お父さんは無言だったが荷物を部屋へ運んでくれた。

 ここなら思いっきり心のままに泣ける気がした。

お風呂から出ると彰くんから返信があった。電話もくれたようだ。

彰くんへ電話した。

『もしもし七海?』

『もしもし 勝手にごめんね』

『もう着いたのか?』

『着いたよ』

『1人で行ったのか?』

『うん、でも駅まで迎えに来てもらったよ』

『心配させるなよ、帰りは迎えに行くからな』

『えっ大丈夫だよ ?1人で帰れるよ』

『ダ・メ・だ ! 迎えに行く 。お義父さんとお義母さんに挨拶しようか?』

『えっ しなくていいよ 今なんだか忙しいみたいだしさ』

 帰るまでは流産を知られたく無かった。

『そうか?じゃあよろしく伝えてくれ』

『了解!彰くんはきちんと食べてね』

『七海に言われたくないね』

『あらそうですか?では さようなら』

『おい もう切るのか?寝るときも起きたときも連絡入れろよ』

『わかりました、彰くんも気を付けて帰ってね 、じゃあね』

『ああ じゃあ』