私は赤ちゃんの心臓の事を気にしないように自分に言い聞かせ、 出勤した。

 午後、お手洗いに行くと少量の出血があった。動揺するもあと少しと思い定時まで仕事をする。

本当なら病院へ連絡した方が良かったのかも知れないが、この状況を信じたくなくて、そのまま直接病院へ行った。

先生から告知された。

「赤ちゃん 残念ながら流産です。
よくあることで 赤ちゃんがまだ生まれる準備が整わないと自らいなくなるんです。 お母さんのせいでは無いので自分を攻めないで下さいね。明日、処置をしますので来院してください」

看護師さんからは明日の説明を受ける。

「明日のお昼に処置しますので、その時にご家族の同意と印鑑が必要になります。必ずご家族の方と一緒にいらしてください。 麻酔をしようするので車は運転して来ないようにお願いします 」

彰くんのお弁当だけ買って帰る。食べても食べなくてもどっちでもいい。

泣きたい 、でも家に着くまでは我慢する。

客室に布団を敷きパジャマに着替えて布団に入る。涙が溢れ出た。

先生は『お母さんは悪くない』と言ってくれたが、やはり自分を攻めてしまう。

”ごめんね ごめんね お母さんのせいで ごめんね 会いたかったよ” とくりかえす。



「ただいま」

彰くんが帰ってきた。急いで布団の中へ潜る。

「ただいま、七海?いる?」私を探しているようだ。声を出すのに平静を装う。

「ごめんね、ちょっと体調悪いから客間で寝てるの。お弁当買って来たから良かったら食べてね 」

「風邪か?開けるぞ」

「ちょっとだるくて横になってる。あの彰くん? 明日って会社休めないかな?せめて午前中だけでも」

「明日は無理だな、会議が入っているし。病院か?」

「そう、産婦人科へ行くつもり」

「母さんに一緒に行けるか聞いてみようか?」

「聞いてもらえると助かる、出来たら9時半に家を出る予定なの」

「わかった 」

「 母さん行ってくれて迎えに来るって『お大事に』ってさ。七海?何か欲しいものないか?」

「飲み物もあるから大丈夫、もう休むね」

「電気はどうする?」

「消して貰っていい?」

「あぁ」

「おやすみなさい」

「おやすみ」
 
 七海頑張ったね!もう泣いてもいいよ。自分自身に呟く。彰くんに聞こえないように涙を流す。

 彰くんは自分が寝る前も部屋に来たが、寝ている振りをした。
 
 良かったのか良くないのか布団を捲られて顔を見る程心配はされていなかった。