人気のない森の奥。俺、シャンソンは黒いトレンチコートにコートと同じ黒の帽子、そして顔を隠すために仮面をつけ、リボルバーを手に立っていた。

「覚悟、できたか?」

俺がいつもより低い声で訊ねると、目の前で祈りを捧げていたニットワンピースにコートを着たブラウンのショートボブの女がゆっくりと顔を上げる。俺の恋人のサラだ。

「ええ。もういつでも大丈夫……」

そう言うサラの体は痩せ細り、覇気がない。誰が見ても大病に侵されているとわかるだろう。

今から彼女はここで俺に殺される。いや、彼女は俺が殺すなんて知らない。ただのシリアルキラーだと思っている。

大丈夫、いつものように殺せばいい。恋人とはいえ所詮は他人だ。感情を捨てろ。

俺はリボルバーを目の前に立つサラに向けた。



俺は殺し屋だ。十五歳の頃から暗躍し続けていて、裏側の世界ではかなりの有名人となっている。殺害方法は銃殺。幼い頃、クリスマスに道端で拾ったリボルバーを使ってな。

幼い頃から独りの俺は、愛なんてものは知らない。これからも知らないと思い込んでいた。