「あ……新田(ニッタ)さん!」


シィは近くにいた3年生に声をかけ

「これ、マネージャーからの差し入れっす」

さっきビーコからもらったばかりの容器をそのまま先輩に渡した。


オレはこいつほど鈍感で女心のわかんないヤツを見た事がない。

それが理由なのかどうだか、こんなに何でも揃ってるくせに、いまだに彼女ができない。


というか……こいつは、幼馴染にマジ惚れの片思い中だ。

相手は本田由香里(ホンダユカリ)。

学年一の美少女だ。


シィがユカリに惚れてることは、周囲のみんなにはバレバレ。

だけど、本人は他人に気付かれてることすら自覚してない。

それぐらい鈍感なんだ。

その天然ぶりがウケてるのか、同性からも不思議と嫌われていない。

コイツもある意味得な性格してるな。




「おーす! お疲れ!」


今度は能天気な声が響いて、オレ達はまた振り返った。