キミだけのヒーロー

オレ、『競争しよう』って言ったよな。

それなら、1本見つけた時点でサユリの勝ちだったのに……。


「あたし、こういうの見つけるの得意やねん。でも、ケンジも見つけられたらいいなぁって思ったから、あえて黙っててん。そしたら2本も見つけちゃった」


そう言って、肩をすくませて、いたずらっぽい瞳で微笑む。


やばい……。

マジで可愛すぎだろ。

こんなこと言われてときめかない男なんていねーよ。


「1本、ケンジにあげるね。 でも押し花にしたいから、2本ともとりあえずあたしが預かっとく」


サユリは大事そうに四つ葉のクローバーを手帳に挟んで、鞄にしまいながら話す。


「あたし、くじ運とかもいいねんよー? 幸運の持ち主やねん。 あたしといたら、きっと良いことあるよ?」


「マジで? あやかりたいなぁ……」


そう言って、サユリに向かって手を合わせるポーズでおどけたオレ。

だけどサユリはフフっと笑って、また寂しげな表情に戻ってしまった。


「でも……。ほんとはクジ運なんてどうでも良かったなぁ。そんなのいらないから、肩を元に戻して欲しかった……。あたし……あれ以来、自分のやりたいことが何も見つからへんねん」


「サユリ……」


「……って。ああ。ごめんね。また暗い話してしまった」


無理に笑顔を作るサユリにオレができる事は……。


「肩もんだる!」


「え? ちょ…ちょっと」