キミだけのヒーロー

オレ達はキャッチボールをやめて河川敷に座り込んだ。

ふいにサユリが話し始めた。


「あたし、子供の頃、プロ野球の選手になるのが夢やってん」


「へぇー。そうなんやぁ」


また見つけた。

サユリの意外な一面。



「小学生の頃は、男の子に混ざって近所の野球チームに入っててんよ。 でも、中学に上ったらさぁ……。野球部に入部させてもらわれへんかってん。『女子はダメ!』って。あん時はショックやったなぁ……」


「あはは」


サユリはほんとに残念そうにつぶやくと、地面に生えた草をプチプチとむしり始めた。

ほんとに意外だ……。

いかにも“女の子”らしい印象を与えるルックス。

それなのに、小学生の頃は男と一緒に野球やってたなんて。


「それでも諦めきれずに、結局ソフトボール部にしてん」


「ポジションはもちろんピッチャー?」


「うん。これでもかなり将来を期待されててんで」


「すげーな」


「調子に乗って、『将来は全日本チームに入って海外の試合で投げる!』なんて思ってた。だけど……」


サユリは急に声のトーンを下げて、草むしりをやめた。

そして視線の先にある川をぼんやり見つめながら言葉を続けた。


「中2の時に肩痛めて……。ドクターストップがかかってん。それでもうソフトも続けられなくなった……」


そう言って、寂しげな目をするサユリにオレは言葉が見つからなかった。


ふいに、足元に広がるクローバーに目がいった。


そうだ……。


「なぁなぁ。四葉のクローバー探さへん?」