何がどうというわけではなかった。

だけど彼がボールを追いかける姿がいつまでも目に焼きついて離れない。


あたしの中で何かが変わった気がした。

今は目標を失っているけど、あたしも今やれることはちゃんとやろう。

この日を境にあたしは少しだけ前向きになることができた。



あの時、泣いている彼に声をかけちゃいけない気がして、走り去ったけど……。

ほんとはちょっと後悔してた……。

やっぱりちゃんと話せば良かったなって。

もう二度と会えないんだろうな。


あたし、ずっと会いたかったの。


あなたに……。


あの日からずっと恋してたんだよ。


あなたはあたしのヒーローだったの。


――――……
―――――――



「……ユリ……サユリ! おい! 大丈夫か?」


顔のすぐ上で、あたしの大好きな声がした。


ゆっくり目を開けると、ぼんやりした視界の中に


――あなたの泣きそうな笑顔が見えた。