とうとうサユリの家の前についた。


インターフォンを押すだけなのに、その勇気がなかなか出ない。


怪しまれないかと近所の目を気にしながらも、オレはただ突っ立ってるだけだった。

大きなため息をついてうなだれて、ふいに顔を横に向けた。


「サユリ……」


サユリがちょうど角を曲がってこちらにやってくるところだった。

正門前でオレから逃げた後、サユリも家へは帰らずどこかで時間を潰していたんだろうか、彼女は制服のままだった。

サユリもオレに気づいて足を止めた。


二人の距離は30メートルぐらい。

まるで目の前に透明な壁でもあるかのように、お互いに動き出せないでいる。

見つめ合っている時間は随分長いように思えたが、ひょっとしたら2、3秒のことだったのかもしれない。

サユリはくるりと背を向けたかと思ったら、またオレから逃げていった。

角を曲がったため、サユリの姿はすぐに見えなくなってしまった。


オレもハッとして慌てて後を追う。


ここで逃したらほんとにダメだ。

あの時、水飲み場でただ背中を見送ることしかできなかったオレ。



今度は捕まえてみせる。