サトシはそれを手にとって掲げると、不思議そうな顔で眺めている。


「隣のクラスの……横山雅ちゃんのアドレス。サトシに渡してくれって頼まれてん」


「お。サンキュ」


こんな事には慣れているんだろう。

たいしたリアクションもなくそう言うと、封筒を開けて中を確認し、ポケットから携帯を取り出してカチカチと触りだした。


早っ。

さっそく登録かよ――。



表情一つ変えずに携帯をいじっているサトシと、真面目にボールを磨いているシィの顔を見ながらふと考える。


何かがおかしい……。


最近、オレの人生の歯車が狂っている気がしてしょうがない。


こいつらとつるむようになってから、オレの位置は主役じゃなくなった気がする。

学内でもなにかと目立つこの二人。

そんな二人の間にいると……どうしても存在が薄くなってしまう。


オレは本来“レッド”のはずなのに。

どう考えても今のオレは“レッド”じゃない。

かといって、2番手の“ブルー”って位置でもない。

あえて言うなら、癒し系とか言われながら、イマイチ存在感のない“グリーン”って感じ?



嫌だ!

オレは手にしていたタオルをギュっと握った。



このままではいけない!


なんとかしなければ!



そう思ったオレは、このモヤモヤを打破すべく、翌日さっそく実行に移した。